導入前の課題
- 単品用と定期用のカートをそれぞれ契約していたため、受注データがリアルタイムに反映されないなどの不都合があった
導入結果
- サブスクストアにカート機能を集約することで、受注・注文対応業務の工数削減が実現した
- サブスクストアに移行後、月商3億を達成
小野食品株式会社は、焼魚や煮魚など調理冷凍食品を販売する通販サイト「三陸おのや」を運営しています。
今回は小野食品株式会社が三陸おのやのカートシステムとしてサブスクストアを導入した経緯について、営業部コールセンターの鈴木さんに詳しくお話を伺いました。
なお小野食品株式会社は、サブスクストアをカスタマイズして利用するプラン(エキスパートプラン)で契約されています。
会社概要とサービス内容
──会社概要について教えてください。
鈴木さん:私たち小野食品株式会社は、焼魚や煮魚といった調理加工品を一般消費者に向けて販売する通販サイト「三陸おのや」を運営しています。その他には、高齢者施設や病院の介護食、学校給食などで提供される魚調理品の製造・販売も行っています。
また現在ではマレーシアや中国といったアジア地域を中心に海外展開も進めていますし、新型コロナウイルスの流行を機に需要が高まった宅配弁当関係の商品提供も行っていますね。
私たちはもともと、大手スーパーや外食チェーンに向けて魚調理品の卸やOEMのような事業を展開していました。そんな中、私たちの商品を一般のお客様にも届けられないかという声が社内で挙がりまして。まずは地元の方々に受け入れられるかどうかということで何回も何回もテストを重ね、徐々に一般の方向けの販売を拡大させていったというのが現在の三陸おのやの由来です。
通販は商圏が限定されないという特徴があるため、東日本大震災をきっかけに通販事業が弊社の主事業となっていきました。震災以前は弊社における売上の1割ほどだった通販事業ですが、現在では売上の7割を占め年商数十億規模の事業となっています。
──三陸おのやのターゲットや集客施策について教えてください。
鈴木さん:三陸おのやをよくご利用いただくのは60代以上の方です。そのため新聞や折り込みチラシ、TVCMといった媒体からの集客がメインになります。
Web広告経由では30代~50代のお客様にご購入いただきます。ただ、実際の利用者はご高齢の方といったケースも多いです。例えば「広告を見た現役世代が商品セットを購入し、それを実家に住む父母に直接送る」というような注文です。
3、4年前ほど前までは売上に占めるWeb受注の比率は約10%ほどでしたが、コロナ禍を経て最近はもう30%近くとなっています。もちろん注文の経路がWebにシフトしただけといった可能性も当然考えられますが、広告のパフォーマンス的にもオンラインでの広告施策は外せないものにはなってきていると感じますね。
旧カートシステムからサブスクストアへ移行した経緯
──オンラインショップはいつ開設されましたか?
鈴木さん:オンラインショップの開設自体は震災の2〜3年ほど前に行っておりました。ただ、現在の一般的なオンラインショップや自社ECサイトに必要とされるようなインフラは全く整っていませんでした。ほとんどの注文をお電話で受けていたので、Webサイトは本当に最低限の受注の窓口といった役割でした。
当時は2つのカートシステムを利用していました。一つは単品購入用の、もう一つは頒布会や定期購入用のカートシステムです。そのような運用体制でしたのでお客様からするとすごく使いにくかったと思います。
私たちとしても、各カートのデータを当時の基幹システムに取り込むことで最終的には確認可能でしたが、リアルタイムで確認できないことによる不都合がありました。例えば、私たちは新規注文を受けるコールセンターをアウトソーシングしているのですが、その外部のコールセンターで受注したデータが当時は次の日に納品されていました。そのような体制のため「さっきの注文内容を確認したい」といったお客様からの問い合わせに即対応することが難しかったんです。
サブスクストアを利用してからは常に受注情報が最新の状態で確認できるようになったので非常に嬉しいですし、カート移行の価値を感じています。
──受注の窓口としてのカートシステムがあった中で、どうしてサブスクストアへの移行を決意されたのでしょうか?
鈴木さん:コロナ禍で急成長というわけではないですが、2020年では約3万5000人ほどだった頒布会の利用者数が2021年には約4万5000人に、そして2022年には約6万人へと急増しました。
そのような状況で「さらなる増加に対応できるよう足場を固めよう」という話になり、約10年利用し続けてきたシステムから新たなシステムに移行することにしました。改善を重ねてきたものの旧システムは時代を感じるもので、例えば決済機能や操作面で「処理が面倒」「もっと簡単な操作にしてほしい」といった声がオペレーターから常に挙がっていたんです。
そこで親しくしていた広告代理店さんに何社かピックアップいただき、結果サブスクストアに決めたという経緯があります。広告代理店さんの推薦が直接的な選定理由ではありますが、以前より別の取引先さんから「頒布会や定期通販はテモナさんが強いよ」といった話も聞いていましたので、それらの事前情報が選定の理由になったことも事実です。
サブスクストアにカート移行で、売上は前年比119%に
──サブスクストア導入による効果を教えてください。
鈴木さん:サブスクストアに移行して1年ほど経ちましたが、売上は前年比119%となっています(2022年2月と2023年2月での比較)。頒布会の利用者が順調に増えていることが売上増加の主要因です。現在では月商約3億円まで売上が拡大しています。
工数削減という観点では、サブスクストア移行によってお客様の対応の質がかなり上がったと感じますね。カートがサブスクストアに統合されたことによってお客様の注文内容がリアルタイムで反映されるようになりましたから、単品か定期注文かといった提供サービスによる対応のタイムラグがなくなったというのは大きいです。これは以前に比べると本当に幸せなことです(笑)
また多様な決済に対応できるようになったこと、特にクレジットカード決済の対応が簡易的になったことが大きいですね。
以前は電話でカード情報を直接お聞きしたり、申請の書類を送付していただいたりしたので事務処理に手間がかかっていました。「実際このカード使えるの?使えないの?」といったことも注文時に判断がつかなかったため、商品の発送が完了した後にカード利用不可が発覚するといったケースも多々ありました。今ではそのようなトラブルがほぼ無いので、サブスクストアに移行して決済まわりは一気に楽になりましたね。
小野食品の頒布会の取り組みについて
──先ほどから何度か話に挙がっている「海のごちそう頒布会」の取り組みについて、詳しく教えてください。
鈴木さん:一般消費者向けの事業を始めて少し経った頃、「5000円払いますから、毎月離れて暮らしているお母さんに魚の惣菜を詰め合わせて送ってくれないでしょうか?」といった要望を頂いたんです。そこで現在の頒布会のような対応をそのお客様に行いました。
あるときふと弊社の代表が「そのお客さんってまだ継続してくれているの?」と気になり調べたところ、ずっと継続してくださっているということがわかりました。「これは新たなビジネスのチャンスじゃないか」という発想から、頒布会、今風に言えばサブスクが誕生したのです。
──小野食品様の「海のごちそう頒布会」の利用者の平均利用回数は、離脱客を含めた全体平均で”13.5回”と伺いました。一般的な定期購入サービスにおいては平均3〜4回の利用回数がベンチマークとされる中で、どのようにして購入回数を伸ばしているのでしょうか。
鈴木さん:私たちは食品を提供しているので、「商品の質」が頒布会の継続率や解約率にダイレクトに関わってきますね。そのためまずは安全安心で美味しい商品を提供すること、これが第一です。
同時に重要なのが、お客様とのコミュニケーション、いわゆるCRMですね。
私たちはお客様から毎月約500通のご意見ハガキを頂くのですが、それらすべてに目を通し、手書きですべて返信しています。また頂いたコメントすべてをデータ化し、商品ごとに良い意見、悪い意見、改善点などをまとめ、各部門と共有しています。
加えて既存顧客に対応するコールセンター業務をインハウスで行っていることも、お客様の満足度や継続回数の向上に寄与していると思います。
前述の通り新規の受電は外部のコールセンターにアウトソーシングしているのですが、それ以外の、商品に関する問い合わせや注文内容変更などの顧客対応は自社内のコールセンター部署で担当しています。新規はプロモーションの関係もあるので外注していますが「注文後のフォローは私達がきっちり行います」といった体制にしております。
コロナ渦になる前まではお客様を招いて座談会もやっていましたね。
以上のように、商品以外の付加価値としてのコミュニケーション設計を大切にしております。
──サブスクストアでは頒布会に関する機能を追加開発いただきましたが、どのような背景で追加開発されたのでしょうか。
鈴木さん:三陸おのやでは頒布会を、契約してもらう/もらわないといった2択ではなく、お客様の要望に沿う”未来を細かく管理できるような仕組み”にしたかったのです。結果として、「来月だけお休みにしたい」、「偶数月だけのお届けにしたい」、「次のお届けでは多めに注文したい」といったような細かい注文内容や頻度の変更が可能な仕組みが実現しました。
背景としては、弊社の代表が「最低〇回購入の必要がある」といった、いわゆる「定期縛り」の飲料系サブスクで嫌な思いをしたことがあり、だからこそ「定期購入だとしてもお客様が自由に利用できるようなものにしたい」という想いがありました。
使いやすい頒布会にしたおかげか現在では「以前契約をやめたけど再度契約をします」といったお客様もたくさんいらっしゃいます。お客様目線でのサービス提供は非常に重要だと思いますね。
今後の展望と、EC担当者へのメッセージ
──今後の展望を教えてください。
鈴木さん:この頒布会事業をもっと拡大していきたいと思っています。そのために製造や物流における問題への対策や、コロナウイルスのような新たな感染症の流行に備えた体制づくり、リスクヘッジは常に考えております。
現在おかげさまで毎月6万人もの頒布会利用者がいます。今後は一つの大台として10万人の利用者数を目指して事業を推進していければと思います。
加えて10年後20年後といった会社の将来も見据え、BtoB事業になりますが海外展開にもより力を入れていく予定です。
──最後に、EC担当者の方に向けてメッセージをお願いします!
鈴木さん:わかりました。偉そうなこと言ってしまうかもしれませんが(笑)
どのような企業様でも新しいサービス展開する際は、当然何かしらのコンセプトをもとに取り組まれるはずです。
商品力やサービス構想は素晴らしいのにシステムの制約により業務内容や提供するサービスが制限されてしまうとなると、それは非常に勿体ないことですよね。
会社の特性や強み、差別化される部分をどうシステム化するかと言いますか、「やりたいことを実現できるシステム」が望ましいと思っています。ですから貪欲に、ECの基盤となるシステムに関しては妥協せず、1から作っていくような勢いで取り組んでいただければ、お客様に喜んでいただける事業を展開できるのではないかなと思います。