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ストックビジネスは、継続的に安定した収益が見込めるビジネスモデルのひとつです。
多くの企業がストック型のサービスを採用することで、ビジネスの成長を加速させています。
しかし、実際に収益を安定化させるためには、さまざまな工夫や独自のサービス展開を考えていく必要があります。
そこで、本記事ではストックビジネスの成功例をもとに、安定した収益を得るためのポイントを紹介していきます。企業の成長を促すヒントがあるはずです。
大手ソフトウェア企業での成功例
Adobeは、従来のパッケージ販売からクラウドへ全面的に移行することでビジネスにストック性を持たせることに成功した企業です。
主力となるソフトウェアは高価なものでしたが、プロ向けに多くシェアを獲得していました。
しかし、高価であるがゆえに、ユーザーは簡単には新しいバージョンへと移行してくれませんでした。
ユーザーごとに使用するバージョンが異なってしまうことは、このソフトで作られたファイルをユーザー間で共有する際の障壁にもなっていました。
これらの問題を解決するために、Adobeはソフトウェアのパッケージ販売をサブスクリプション方式のサービスへと転換させました。
製品を購入してもらう買い切り型のビジネスから、契約したユーザーに月額料金を支払ってもらうことで製品の使用権を提供する方式にしたのです。
同時に、サービスをクラウド化することで契約ユーザーは常に最新バージョンのソフトをダウンロードして使用できるようになりました。
また、クラウド経由でユーザー間のファイル共有がスムーズに行えるようになったことも、既存ユーザーがサブスクリプション契約へと移行するのを後押しした要因です。
さらに、月額料金をパッケージ版よりも低価格に設定することで、今までは高価で手が出せなかったユーザー層へもシェアを拡大することに成功したのです。
このビジネスモデルの成功のポイントは、高価だった製品を低価格の月額料金で利用できるようにしたという価格面のメリットだけでなく、それまで抱えていた問題を解決できるという付加価値を顧客に提供することができたことにある、と言えるでしょう。
買い切り型のビジネスからサブスクリプション方式に転換することで、企業の収入もフロー型からストック型にシフトしました。
大手レシピサイトでの成功例
クックパッドは、広告収入と有料会員から得られる収益とを組み合わせたストックビジネスで成功している企業です。
同社は、誰でも無料で利用できる料理レシピに特化したコミュニティサイトを提供しています。
ユーザーは会員登録をすることでレシピを投稿したり、他の会員が登録したレシピにコメントをつけて交流したりできます。
このサイトでは、レシピ検索やお気に入りのレシピの保存など、基本的な機能は無料会員でも利用することが可能です。
無料で利用できるため利用者を囲い込みやすく、サービス開始当初から広く認知され会員数も増えていきました。 また、月額料金を支払って有料会員になれば、さらにさまざまな機能が使用できます。 いわゆる「フリーミアム」モデルです。
フリーミアムモデルの場合、無料会員をいかに有料会員に移行させるかが、ビジネス成功のカギとなります。
しかし、このサービスでは移行が思うように進まなかった時期がありました。
その危機を救ったのが企業広告でした。 食品メーカーなどはクックパッドのサイトと親和性が高く、ユーザーは広告と分かっていても有益な情報として興味を示したのです。
広告効果が高かったため企業側にも好評で、継続して広告収入を得られるようになりました。
利益が安定したことで、検索機能の強化やユーザビリティ強化など、ユーザーにとって価値のあるシステム開発にコストをかけられるようにもなりました。
中でも、要望の多かったレシピのランキング機能を有料会員限定のプレミアム機能にしたことで、無料会員からの移行を促す結果になったのは興味深い点です。
ユーザーにとってどのような情報に価値があり、どのようなサービスなら課金しても使いたいと思えるものなのかをよく見極めることが重要であるという成功例でしょう。
大手通販企業での成功例
通販でも実店舗での販売でも、商品の購入は1回ごとの取引が基本ですから、小売業の多くはフロービジネスにあたります。
しかし、Amazonは会員制を導入することで小売販売にストック性を持たせることに成功しています。
同社は有料会員のみが利用できるさまざまな特典を提供し、月額料金によって収益を拡大していくビジネスモデルを構築しました。
優先配送や定期購入、会員限定セールなどを会員限定で提供しています。 無料会員でも通常の通販は利用できますが、有料会員はよりプレミアムなサービスという位置づけです。
さらに有料会員向けの付加サービスとして、動画や音楽、電子書籍などのデジタルコンテンツの配信も手がけています。
コンテンツ配信は会費のみの定額制で利用し放題のため、サブスクリプションの成功例ともいえるでしょう。
実際に多くのユーザーが高い価値を感じ、有料会員になることを選択しています。
その結果、たとえ通販の注文が少ない時期があったとしても、安定的に収益を得ることができるようになったのです。
安定した収益があるとはいえ、このような高い付加価値を提供するためには多大なコストがかかります。
しかし、ただコストを絞るだけでなく、研究開発に大きく投資しているのがAmazonの特徴です。
社内システムのさまざまな改良が継続的に行われ、配送の効率化などによる通販コストの削減を繰り返し実現してきました。
また、デジタルコンテンツを安定的に提供するために必要なシステムも社内で開発しています。
月額料金以上の価値をユーザーに感じてもらうためには、サービス開発への投資が重要であることを示す例です。
大手音楽サイトでの成功例
定額で聴き放題の音楽配信サービスは複数あります。
そんな中、フリーミアムモデルを組み合わせたストックビジネスで成功しているのがSpotifyです。
音楽の配信ではアーティストへの印税が発生するため、無料の会員登録を実現するのは通常は難しいことです。
しかし、同社のサービスではユーザーは無料で会員登録ができ、無料会員が聞ける楽曲は有料会員と差がありません。
また、無料での利用期間にも制限がありません。
その代わり、楽曲再生の合間に広告が流れるという仕組みです。
広告によってストック性を持たせているという点が、このサービスの注目すべきポイントでしょう。
ユーザーは料金を支払っていないにも関わらず、ユーザー数が増えれば収益が積み上がっていくのです。
また、無料であること自体が競合サービスとの差別化にもなっています。
さらに、人気アーティストの楽曲を独占配信するイベントによってユーザーの関心を集める工夫も行っています。
とはいえ、広告による収益からアーティストへの印税を差し引くと利益は大きくないため、有料会員に移行してもらうことがビジネス上の本命です。
有料会員への移行を促すために、Spotifyでは会員の差別化が行われています。
無料会員の間は、楽曲のスキップや選曲といった操作がある程度制限されるのです。
有料会員になると制限が解除され、自由に選曲ができるようになります。 高音質になり広告が非表示になるのも、有料会員の特典です。
このように、無料サービスによって大勢のユーザーに興味を持ってもらったうえで、サービス内容に差を設けることで有料会員数を増やすことに成功しています。
ストックビジネスで安定収益を得るためのポイント
安定した収益を得るためには、課金のことばかりを考えていてもうまくいきません。
サービスを受けるユーザーの立場で考えたときに、継続的な支払いに値するだけの価値が必要です。
ここまでで紹介してきた成功例においても、すべての企業のビジネスモデルに「継続的なサービスの提供」と「会員制による課金」の2点が組み込まれていたことに注目しましょう。
この2点を両立させることが、ストックビジネスで安定した収益を得るためのポイントです。
実際に各分野でトップを走る企業の多くは、ビジネスにストック性を持たせることで成功を収めています。
すでに競合がいる分野でストックビジネスに参入するためには、継続性とオリジナリティがあるサービスを考え出さなければならないでしょう。
そのためには、競合サービスのメリットとデメリットを観察・分析し、デメリットを克服した新しいビジネスモデルを構築する必要があります。
何がユーザーにとっての価値になるかを、サービス内容とコストパフォーマンスの両面から検討することが重要です。
信頼できる課金システムを用意しておくことも、ビジネス成功の秘訣です。
月額課金を行う際には、サブスクリプションと顧客管理に対応したシステムが必要になるでしょう。
「サブスクストア」は、サブスクリプションのようなリピート販売に特化し、きめ細かい顧客管理機能も兼ね備えたECシステムです。
会員制の課金システムとして導入し課金処理をスムーズに行えるようになれば、サービスの提供により力を注いでいくことが可能になります。