目次
近年広がりを見せる「サブスク(サブスクリプション)サービス」。飲食店や美容サロンといった実店舗でもサブスクサービスが提供されるようになってきました。
成功/失敗している店舗のサブスクにはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。
本記事では実店舗のサブスクサービス事例を業界や商材別に紹介し、事業成功のポイントを解説していきます。
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店舗のサブスクとは?
そもそも店舗のサブスクとは?
サブスク(サブスクリプションサービス)とは、商品やサービスを継続的に利用することができる定額制のサービスのことです。店舗で提供されるサブスクサービスには、大まかに以下のようなサービスがあります。
・特定の商品やサービスがもらい放題/~し放題
・通常料金の一部割引
・デポジット/指定の回数まで無料
加えて、サブスクサービスの会員に対して「座席を優先的に予約できる」「誕生日月に特別なプレゼントが受け取れる」など、価格のお得感以外の価値提供も行われていることもポイントです。
店舗のサブスクは、繰り返し来店してもらうことが前提のサービスになります。
例えば株式会社日比谷花壇が運営する「ハナノヒ」は、店頭で専用アプリを用いQRをコードを読み取ることで花を受けとることができるサービスです。店舗は主要駅に隣接する商業施設に入っていることが多いため、通勤時などに利用してもらえます。
実店舗でサブスクサービスを提供するメリット
実店舗でサブスクを提供することにはいくつかメリットがあります。以下では「顧客の集客手段になりうる」「サービス改善に繋げやすい」の2点を解説します。
顧客に来店してもらうきっかけになる
サブスクサービスは数回来店することでおトクになるように価格づけされていることが多いです。そのためサブスク利用者は「元を取ろう」と思い、一定期間内に数度店舗に訪れることになるでしょう。また事業者としても、単品で商品を購入してもらうより顧客単価を向上させることができるので収益が安定します。
クロスセル施策(関連商品のセット販売)も展開することで、さらに顧客単価をアップさせることもできるでしょう。
また実店舗でサブスクサービスを提供することは、その新規性や話題性により既存顧客とは異なる新規のお客様に来店いただくフックになることもあります。
例えば、現在ではサービス停止となってしまいましたが月額8,600円で二郎系ラーメンが食べられるサブスクを提供した「野郎ラーメン」はSNS等で話題となり多くの来店者を集めました。
顧客から継続的にフィードバックをもらいサービス改善ができる
顧客に個人情報等を登録してもらうことで、顧客データを蓄積することができます。顧客データを収集・蓄積しておけば、顧客のニーズや嗜好の分析・把握が容易になり、サービス改善につなげることができます。
また店舗でサブスクを提供することには、店舗に来店されたお客様に直接サービスの感想を聞くことができるという強みがあります。事業者は顧客の満足度を定量・定性の両面から把握し、それをもとに改善策を検討することができるでしょう。
実店舗のサブスクサービスで成功するためのポイント
実店舗でサブスクを提供することには様々なメリットがありますが、一方で事業がうまくいかずサービス休止やサービス撤廃となってしまったケースも多々あります。
成功してる店舗のサブスクにはどのような特徴があるのでしょうか。以下では、実店舗のサブスクで成功するためのポイントを解説します。
商材特性や業界構造がサブスクという課金形態にマッチしている
サブスクサービスを成功させるためには、まず商材特性や業界構造がサブスクという課金形態に適していることが重要です。「繰り返し購入してもらえる商品/サービスである」「新たにサブスクサービスを提供しても店舗側のオペレーションの負担が大きくない」などといった点が必要です。
複数プランを用意し、加入しやすくする
複数のプランを用意することで、顧客が自分に合ったプランを選びやすくなります。利用回数や商品の提供量に応じて価格帯の異なるプランを提供することで、顧客のニーズに応じた選択肢を増やしサービス加入の間口を広げることができます。
また初回限定の割引やお試しコースを設けることで契約の心理的ハードルを下げることも有効でしょう。
来店されたお客様に直接サブスクコースを案内する
来店されたお客様に、ポスターの掲示や店員からの直接の案内を通してサブスクサービスを周知させることも重要です。
株式会社イーマインターナショナルが運営するエステサロン「SBS TOKYO(エスビーエストウキョウ)」では、施術の担当者が顧客にサブスクサービスの内容やメリットを説明することで、顧客のサービスの加入の意欲を高めています。
サービスを案内する際には、顧客の質問や懸念に対して適切にお答えし安心感を与えることが大切です。
※SBS TOKYOの詳しい事例はこちら:導入1年で売上の10%以上をサブスク化することに成功:イーマインターナショナル株式会社
実店舗のサブスク事例を業界別に紹介!
以下では、日本国内の店舗で提供されているサブスクサービスを業界別に紹介します。
飲食店のサブスク
飲食店のサブスクとしては、カフェのサブスクや飲食店のサブスクがあります。
月額数百円~数千円でドリンク1杯や対象の料理が一品無料になるといったサービスです。
例えば大手コーヒーチェーンの上島珈琲店では定額制パスポート(上島珈琲店PASS)を購入することで一日一杯ドリップコーヒーもしくはアイスコーヒーを受け取ることができます。
※参考:飲食店のサブスク事例10選!サブスク×飲食に取り組むメリットも解説
お菓子のサブスク
お菓子やスイーツのサブスクも注目を集めています。「お菓子/スイーツが詰め合わされたボックスが郵送されて自宅に届く」といったサブスクもある一方、実店舗で展開されているサブスクサービスもあります。
例えば株式会社ダロワイヨジャポンが運営する「ダロワイヨ」の「My Maca(マイマカ)」というサブスクサービスでは、毎日好きなマカロンを1個店舗で受け取ることができます。月額1,000円と安価で始めやすく、味も好きなものを店頭で選べるので飽きにくいです。
美容院・エステのサブスク
美容業界でもサブスク化が進んでいます。先述したエステサロン「SBS TOKYO」や美容院で、カットやカラーの施術がサブスクで提供され始めています。
類似の業態で言えば、接骨院やマッサージ店でもサブスクサービスが取り入れられています。
これらの業態でサブスクを提供する強みは、もともとリピート顧客の割合が多いということと、施術中に顧客とのコミュニケーションがとりやすいという点にあります。
※参考:導入10ヶ月で会員登録者数1800名突破!サブスク@で美容サロンのクローズドECを実現:スティル
花のサブスク
花のサブスクは「家に季節の花が定期的に届く」といったサービスが主流ですが、実店舗で提供されるものもあります。例えば先ほど紹介した「ハナノヒ」が該当します。
実店舗で提供される花のサブスクを利用する最大のメリットは、自分で好きな花が選べる点です。また花の手入れの仕方や豆知識を店員から直接聞けるといった点も魅力ではないでしょうか。
花の種類や手入れの仕方にもよりますが、新鮮な花が楽しめるのは「1〜2週間程度」と言われています。そのような意味で花は継続して購入してもらいやすい商材なので、サブスク事業が成立する余地があるでしょう。
※参考:花のサブスクの選び方と12個のおすすめサービスを紹介!
ホテルのサブスク
新型コロナウイルスの影響で一時需要が低下したホテル業界では、サブスクを提供することで収益を確保しようとする動きが見られました。
例えば5つ星ホテルに認定されている帝国ホテルは「帝国ホテルサービスアパートメント」というサブスクサービスを展開しています。30泊、5泊、追加1泊ごとといった滞在日数、また利用するフロアに応じて料金が変わります。
オプションでルームサービスやランドリーサービスも用意されており、一流ホテルに長期滞在できるサブスクということで注目を集めています。
他にも東急株式会社が運営する「TsugiTsugi(ツギツギ)」というホテルのサブスクは、定額料金で全国181の提携施設に1泊単位で自由に泊まることができます。
都市型もリゾートも、全国の多様な宿泊施設が利用できるので、観光でもビジネスでも利用できるようなサービスです。
その他:無印良品
株式会社良品計画が運営する無印良品でも、サブスクサービスが提供されています。新生活に必要なベッドやデスク、チェアなどの家具が一式で揃うようなサブスクです。
Webだけでサービスを契約することもできますが、店舗で商品の実物も見ることができます。
※参考:家具のサブスク/レンタルサービスの選び方は?おすすめの家具サブスク/レンタルサービスを紹介!
店舗のサブスクの失敗要因
サブスク事業の9割は失敗する?
コンサルティングファームの株式会社クニエの調査によると、91%のサブスク事業が最も重要なKPIの達成率が100%に満たない、つまり、9割の事業者がサブスク事業に失敗していると回答しています。
店舗のサブスクでは、話題を集めたもののサービス停止や撤退となってしまったサービスも多々あります。本記事では、店舗のサブスクサービスの失敗要因が「サブスク事業の設計ミス」にあるという観点から、3つのポイントを解説いたします。
参考:なぜ91%のサブスクは失敗するのか?サブスク事業に関する実態調査レポート公開
店舗のサブスクの失敗要因:サブスク事業の設計ミス
①事前の想定と異なるサービス利用による利益率低下
店舗でサブスク運営においては、事前の想定と異なる利用方法によって利益率が低下してしまうことがあります。
失敗事例として、焼き肉チェーン店「牛角」(株式会社レインズインターナショナル)の「焼き肉食べ放題PASS」の提供終了が挙げられます。
「焼き肉食べ放題PASS」は毎月11,000円支払うと「牛角」の焼き肉が食べ放題になるというプランで2019年11月から販売されていました。しかしサブスクを利用する一人客の来店が多くなり牛角のメインターゲットであるファミリー層やグループが店舗を利用しづらくなるという事態が発生したことから、2020年1月での短期撤退となりました。
参考:牛角の焼き肉サブスク、販売終了に 申し込み殺到で来店できず
利益が上がらずサービスの品質や提供量が維持できなくなってしまえば、顧客満足度が低下し継続利用者が減りさらに利益が減少してしまいます。
そのような失敗を避けるためには、サブスク事業の設計が重要です。
①一人ひとりの顧客に対してどのようなサービスを提供するか
②サブスクならではの損益とサブスク利用顧客以外での収益を算出し、いつ費用を回収するか
サブスク事業を成功させるためには、ターゲット顧客の理解、業務プロセスの整備、収益性の担保といった要素を事前に考慮しておく必要があります。
※サブスク事業設計について気になる方はこちら:サブスクビジネスの立ち上げをゼロから支援するサブスククラス
②既存事業と競合している
サブスクで商品を提供すると、既存の単品商品やセット商品との競合が生じることがあります。つまり、顧客がサブスクプランを利用することで、以前は売れていた商品が購入されなくなる可能性があるということです。サブスクサービスを導入する際には、既存の収益を大きく奪うものにならないかが重要となります。
③手軽に利用できるという提供価値しか訴求できていない
サブスクサービスは、手軽に始められることが魅力の一つですが、それだけでは顧客が継続的に利用する理由が不十分です。
サブスクサービスを継続的に利用する必要性が小さいと、すぐに解約されかねません。店舗のサブスクの場合、サービスに飽きられ顧客の来店回数が少なくなり最終的に解約されてしまうということです。そのためサブスクリプションモデルを成功させるためにはサービスの利用しやすさだけでなく、「提供する商品にバリエーションを持たせる」「新商品も投入する」などのようにサービスの魅力を常に高めていく必要があります。
まとめ
サブスクサービスは、最近のビジネストレンドとして注目されているものの、必ずしもすべての業界や事業に適したものではありません。
飲食店などの店舗型ビジネスでサブスクリプションサービスを開始する際には、成功事例だけでなく失敗事例からも学ぶことで、より適切なサブスク事業を構築することができるでしょう。
失敗しないサブスク事業立ち上げについては、以下のコンテンツで詳しく学ぶことができます。
※関連資料
サブスクビジネスの立ち上げについて関心のある方はこちら:サブスクビジネスの始め方と成功の秘訣
D2C×サブスクの成功事例について知りたい方はこちら:サブスク/定期通販の成功事例集