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近年流行しているD2C(Direct to Consumer)というビジネスモデルでは、仲介業者を通さず自社で製造から販売までを設計できるため、ブランドの価値観を消費者に直接伝えることができたり、ユーザーの購買行動に関するデータを幅広く蓄積・活用することができたりします。
しかしD2C事業には、新規顧客を獲得するためのコストが高い、また事業を安定させるためにリピート率を上げるための施策をする必要があるといった注意したい特徴もあります。
それでは現在成功しているD2C事業者は、どのような戦略・施策を講じてきたのでしょうか。
ここでは、オーダーメイドのセルフカラーを提供しているCOLORIS(カラリス)をD2Cの成功事例として取り上げます。カラリスの事業立ち上げの経緯、商品開発、マーケティング戦略などを詳しく見ることを通して、D2C事業を成功の秘訣を探っていきましょう。
COLORIS(カラリス)とは?
オーダーメイドのセルフカラーを自社ECサイトで販売
株式会社ストークメディエーション社が運営するCOLORIS(カラリス)は、オーダーメイドのセルフカラー剤を自社ECサイトで提供しています。
ここでのオーダーメイド(パーソナライズ)というのは、約3分でできる美容師監修Webカウンセリングの結果をもとに、ユーザーに最適な処方を1万通り以上の組み合わせから提案するという意味です。
カラリスのメインターゲットは?
それでは、カラリスはどのような悩みを抱えたユーザーに向けてサービスを提供しているのでしょうか。
カラリスのターゲットは、「美容室に行きたいけれど仕事や育児が忙しく時間が合わない」「そもそも美容室に通うことが苦手」「近くに良い美容室が見つからない」といった悩みを持つ方です。
そのような方々に向けて、美容院に行かなくともサロン仕上がりのようなクオリティで髪を染めることができるようなカラー剤を提供しています。
どうして「オーダーメイド✕セルフカラー」というD2C事業を立ち上げたのか?
そもそもどのような経緯でカラリスは創られたのでしょうか。
ここでは、カラリス創業の背景について紹介します。
アメリカでの先行事例を参考に日本初のサービスを立ち上げ
株式会社ストークメディエーション代表取締役の梅野祐樹さんは、前職のポーラ・オルヴィスホールディングスでの経験をもとに、高収益かつ中長期的に続けられる事業としてオーダーメイド×セルフカラーの事業に着目した、と言います。
高収益かつ中長期的に続けられる事業にまず狙いを定めたのは、今後様々なブランドを展開していきたいと考えており、そのため最初はキャッシュエンジンになりうるブランドを創りたかったからだそうです。
事業展開が可能だと予測できたのは、海外のマディソンリード(Madison Reed)やイーサロン(ESALON)というパーソナライズ×ヘアカラーサービスの先行事例があったからです。
しかし海外での成功事例を単純に模倣するだけでは日本で成功するとは限りません。そのためカラリスは、特に以下の点を考慮したようです。
・日本人は欧米人のように髪質が大きく異ならないこと
・全国に25万店舗以上(コンビニの約4.5倍)の美容室があること
カラリスの立ち上げは、海外で既に成立しているパーソナライズセルフカラーブランドが日本でも成り立ちうるのだと証明する試みでもあったと言えるでしょう。
カラリスのブランディングについての考え方
カラリスのブランドマネージャー稲葉菜月さんは、自社ブランドが提示するイメージと、ユーザーがそのブランドに対して抱くイメージのズレが少ないほど、ブランディングが強固であると考えています。
※参照:【D2Cブランド戦略】パーソナライズヘアカラー「COLORIS」急成長の裏側
セルフカラーを使うのを検討するのは一般に、「白髪の生え始めるタイミング」や「転勤や出産などのライフステージが変化するタイミング」である30代以降だと言われています。
※参照:サロンユーザー調査
カラリスは、「大人の女性は敢えて家で髪を染める」という新しいライフスタイル・価値観をユーザーに提示します。そのためカラリスは、「上質なプロダクト」「個々のライフスタイルに寄り添うサービス」を提供するブランドを目指し、またそのようなブランドとしてユーザーに認識されることを目指してるのです。
カラリスが商品開発にこだわる理由
ヘアカラーで重視されるのは「染まるかどうか」
ヘアカラーという美容系商材は、ユーザーに一度選ばれると、不満がなければ継続して利用してもらえるという特徴があります。
みなさんも、お気に入りの美容室、美容師さんができると大きな転機がない限りそこに通い続けるのではないでしょうか。
しかしそれは「あの美容室で失敗した」とユーザーに思われてしまった場合は、また来店してもらうことが難しいということをも意味するでしょう。
ヘアカラーは、「初回にうまく染まるかどうか」がユーザーから最も重視されると言っても過言ではありません。
商品のクオリティがリピート率を高める
髪が染まるかどうかというヘアカラーの質が、リピート率を決定的に左右します。質の高いヘアカラーを提供できれば、ユーザーがそれを利用し続ける可能性が高いので、それだけLTV(顧客生涯価値)が向上するからです。
カラリスCOOの近藤彰吾さんは、プロダクトの質を上げることが他のどのようなリピート施策よりも優先して取り組むべきことだと述べています。
商品を正しく使用してもらうためのコミュニケーション
プロダクトの質を上げる以外にも、ユーザーの髪がきちんと染まるようにカラリスが行っている施策とは何でしょうか。
例えば、LINEを活用してセルフカラーの手順を伝えています。
髪の長さ、おしゃれ染めなのか白髪染めなのかによって微妙に手順が異なるため、購入属性ごとにコミュニケーションの最適化を行っているようです。 また、Instagramで、商品の使用例を発信しています。
※カラリスのInstagram公式アカウント:coloris_official
ユーザーに商品の適切な使い方を知ってもらうことが、満足のいくカラーリングに繋がり、結果的にリピートに繋がります。
このように、商品を正しく使用してもらうためのコミュニケーションを、チャネルの特徴(ツールの特性やユーザー像)に合わせて行っています。
カラリスの新規顧客獲得戦略とは?
カラリスはサービスのローンチが2019年9月と比較的最近ですが、会員数は既に3万人を突破し、業績も順調に伸びています。
順調に会員数を伸ばしてきたかに見えるカラリスですが、実は新規顧客を獲得するためのマーケティング施策には変化が見られます。
ここではカラリスがどのような新規顧客獲得戦略を講じてきたのかということを見ていきましょう。
メディア掲載とインフルエンサーマーケティングで認知は拡大したが…
カラリスは小さな雑誌や地方のテレビといったメディアに掲載にされるよってユーザーに認知されていきました。次第に全国放送のテレビでも紹介されるようになりました。
2020年前期のカラリスのマーケティング施策は、主としてインフルエンサーマーケティングやアフィリエイト広告でした。
しかしながら、それらマーケティング施策はサービスの認知拡大には寄与したものの、それら施策経由で契約したユーザーのリピート率が低く、またYouTuberへの依頼は1案件あたりの効果検証がしづらいという問題もありました。
つまり認知は拡大し売上も伸びたものの、継続率は伸び悩むという問題が生じました。
ブランドのコンセプトとマーケティングファネルを意識することでLTVが向上
そのような問題に向き合う中で、改めてカラリスがユーザーに対して提供できる価値を考えたようです。
カラリスの目指すのは、「美容室に行きたいけれど仕事や育児が忙しく時間が合わない」「そもそも美容室に通うことが苦手」「近くに良い美容室が見つからない」といった悩みを持つ方に向けて、高品質のセルフカラーを提供することである、と。
そこから、そのような悩みを持つ方にサービスを利用してもらえるようにマーケティングファネルを意識して施策を展開するようになりました。
購入を検討しているユーザーの意思決定に関与するのはひとつのマーケティング施策によって現れる情報だけではないため、ユーザーの導線を点ではなくもっと線で設計すべきだからです。
インフルエンサーへの依頼やアフィリエイト広告も引き続き行いますが、カラリスがメインターゲットにしているユーザーにまずは利用してもらえるように個々の施策を改善し続けています。
そのようなマーケティング戦略こそが結果的にLTVを伸ばし、中長期的な売上の安定に繋がるからです。
※引用・参考:【1万字超】プロダクトローンチから1年で会員数2万人を突破したCOLORISの6つの拡大戦略
カラリスのこれからについて
それでは最後に、D2Cブランドとして成功しているカラリスがどのような未来を見据えているのかについて迫っていきます。
カラリスは、カラリスというブランドをさらに拡大していくことを目指しています。より具体的に言えば、まずセルフカラーのブランドとしてその地位を確立させた後、カラリスブランドとしてその他の美容系商材を販売していくという戦略です。
そして次の段階としては、新たな事業に参入することを考えています。これは創業者の梅野さんが100個のライフスタイルブランドを立ち上げたいと考えているからです。
※梅野さんのTwitter:うめの@代表取締役《ストークメディエーション》
以上、D2Cブランドのカラリスのマーケティング戦略として、事業、商品開発、顧客獲得の考え方などについて紹介いたしました。化粧品やコスメなどの商品でD2Cを立ち上げたい方、すでに運営されている方にも参考になる考え方もあったかと思われます!
※今回の記事は、こちらのサブスクストア導入事例作成の際にお聞きした情報を元に作成しました:セルフカラー×D2C事業を拡大する為にはサブスクストアの開発力が必要でした