目次
EC・通販事業の運営において、バックヤード業務のため目立ちませんが不可欠かつ重要な業務となるのが「在庫管理」です。在庫管理次第で、コストや顧客満足度が変わってくるからです。
本記事では、EC・通販事業における在庫管理業務の内容やその必要性、在庫管理システムの特徴やメリットについて紹介します。
EC・通販における在庫管理業務とは
在庫管理業務とは?
EC・通販サイトにおける在庫管理とは、注文を受けてから商品をスムーズに配送できるようにするために、商品自体と在庫に関連する情報を管理する業務のことです。
在庫管理業務の例 |
仕入先への発注 |
新商品の商品登録 |
季節商品の入れ替え |
各ショップごとの注文データの管理 |
ギフト注文と通常注文の分類・対応 |
在庫管理が適切に行えていないと、「商品がなかなか届かない」「注文した商品と届いた商品が違う」といったユーザーの不満やミスが生まれてしまいます。また「在庫が過剰に余ってしまった」「在庫がない・不足している」といった状況に陥ってしまいます。
したがって、EC・通販事業において在庫管理は重要な位置を占めるのです。
在庫管理におけるポイント
顧客は、注文時に事業者がWebサイトなどで提示した「稼働日(曜日、長期休暇)」「キャンセル締め時間」「返品の取り扱い」などの条件を満たすことを前提にしています。
そのため重要なのは、顧客に約束した上記の条件を満たすようなサプライチェーンの財務パフォーマンスを最大化する在庫量と品揃えを決定することです。とりわけ、在庫切れや過剰在庫を防ぐために「予測精度を最適化」することが肝要です。
1点あるいは1種類の商品を訴求する単品通販と、複数商品を幅広く取り扱うロングテールの場合では在庫戦略は異なります。
単品通販の場合は、主力商品の製造ロット・リードタイムを計算し、閾値(発注点)をSKU別に設定し、在庫点数が発注点を切ったら警告を発するシステムが有効である。
引用:高山隆司『ネット通販は「物流」が決め手!』ダイヤモンド社、2015年、p. 88。
ロングテール型の場合は売れ筋商品(ショートヘッド)、それ以外(ロングテール)とで管理方法を分けるのが一般的だ。ショートヘッドは倉庫に在庫を置き、ロングテールは受注後サプライヤーへの発注を行い、到着後即発送するシステムで運用していく。
この場合、サイト上に在庫の有り無しを表示すると良い。SKUごとに在庫あり(翌日発送)、お取り寄せ(在庫ナシ~到着次第発送)と表示することで、顧客から無用の問い合わせやクレームを防止することができる。
一口にEC・通販と言っても、自社のビジネスモデルや商材によって最適な在庫戦略は異なってくるので注意しましょう。
在庫管理システムとは?導入するメリット
ここでは在庫管理業務を効率化する「在庫管理システム」の特徴や、それを導入するメリットについて見ていきましょう。
在庫管理システムとは?
在庫管理システムとは、自社ECサイトやECモールなどの複数のECサイトの在庫情報や商品データを一元管理できるシステムです。
商品の注文を受けてからユーザーの手元に商品を届けるまでの一連のバックヤード業務をフルフィルメント(fulfillment)と呼びますが、そのフルフィルメントの受注スルー率(フルフィルメントを自動化できている割合)を高めるために、在庫管理システムの導入が進められています。
※フルフィルメントについてさらに詳しく知りたい方はこちら:ネットショップのフルフィルメントとは?基本や成功ポイントを紹介
在庫管理システムのメリット
複数のECサイトを一元管理することで、工数が削減できる
在庫管理システムを導入すると、手動による在庫更新が必要なくなり正確な在庫数を把握できるようになります。
また在庫情報を一元管理をすることにより、例えばAmazonや楽天市場のようなECモールと自社ECといったように複数のECサイトを運営している場合でも、商品在庫に関する情報が連携できます。
そのため在庫管理システムを導入していれば、例えばあるECサイトで商品が一つ売れれば他のECサイトの在庫数の表示も一つ減るといったように、残りの商品数が自動で調整されます。工数の削減に加え、手動による在庫更新の滞りや抜け漏れによってせっかく注文いただいたのに商品の用意ができないといった事態も回避できる可能性が高まります。
ヒューマンエラーを防ぐことができ、顧客満足度の向上に繋がる
例えばメールやエクセルでの顧客情報の管理となると、ヒューマンエラー(人為的なミス)が発生する可能性があります。
ヒューマンエラーとは、例えば出荷漏れや注文内容と異なる商品を届けてしまうといったことです。もしミスがあれば顧客満足度が下がり、リピートしていただくことは難しくなるでしょうし、場合によってはSNSなどでネガティブな発信をされてしまう可能性があります。
在庫管理を徹底することで「届くのが早い」「包装がしっかりしておりキレイな状態で届いた」などのようなポジティブなレビューも増えるはずです。
書類作成業務の工数が削減できる
在庫管理システムがあれば、入出庫時の発注書や請求書が簡単に発行できます。
実際の在庫数と管理上の在庫数に齟齬が生じる可能性を大きく減らすこともでき、会計処理が適切に行えます。
在庫管理システムのデメリット・注意したい点
在庫管理システム導入前に、自社の課題認識が必須
在庫管理システムを導入前に、現在の在庫管理業務においてどのような点が問題になっているのかを洗い出し、必要以上に高額な在庫管理システムを導入することがないようにしましょう。
また、既に導入している・導入を検討している社内の基幹システム、受注管理システム、倉庫管理システム(WMS)との連携が可能かを在庫管理システム導入前に確認する必要があります。
在庫管理システムの理解が必要
在庫管理システムを利用する場合、担当者が在庫管理システム自体を理解し、操作に慣れる必要があります。
とはいえ、慣れてしまえば在庫管理システムを利用したほうが人為的なミスも減りますし工数も削減できるので、導入し活用するほうがメリットが大きいと言えるでしょう。
在庫管理システムの費用がかかる
在庫管理システムを導入するかどうかは、システムの導入費用や利用料を回収できるかという点が決め手になるはずです。
月100個の出荷までが手作業で対応できる限界と一般には言われており、それ以上の商品が売れる見込みがある場合は、在庫管理を含めたフルフィルメント業務のどこかを自動化・省力化することができるシステムを早めに導入することがおすすめです。
まとめ
在庫管理は、EC・通販事業を運営する上で必須の業務です。
担当者は過剰在庫や在庫不足にならないよう日々管理していかなくてはなりません。
複雑な在庫管理業務を自動化・効率化してくれるのが、在庫管理システムです。在庫管理システムを導入するのであれば、複数のシステムを比較し自社の業務課題の解決に最適なシステム及び既存システムと連携できるシステムを導入するようにしましょう。