EC・通販のコールセンター業務の内容とは?代行業者選定のポイントも解説

EC・通販のコールセンター業務の内容とは?代行業者選定のポイントも解説

EC・通販事業において、コールセンター(コンタクトセンター)は新規顧客獲得、顧客単価向上、解約阻止といった重要な役割を果たします。

本記事では、

「コールセンターの業務内容って?」
「EC・通販事業者がコールセンターを設置するメリットは?」
「どのようにコールセンターのアウトソース先を見つければよいの?」

といった疑問をお持ちの方に向けて、コールセンター業務内容や設置によるメリット、コールセンター業務のアウトソースのポイントなどについて解説します。

EC・通販事業におけるコールセンターの役割

コ―ルセンターとは?

コールセンターとは、顧客の電話対応を専門に行う拠点や窓口のことです。

コールセンターのオペレーターはメールやWebサイトでの受注・顧客対応も行うことから、コールセンターは「コンタクトセンター」とも呼ばれます。

電話対応をする人は「オペレーター」と呼ばれ、他にも「コミュニケーター」「テレマーケター」「エージェント」といった名称があります。

コールセンター業務はフルフィルメント業務の一部

フルフィルメント(fulfillment)とは、「商品の注文を受けてから顧客の手元に商品を届けるまでの一連のバックヤード業務」のことです。

具体的には、受注、梱包、発送、仕入れ、納品、検品、在庫管理、コールセンター管理・運営、入金管理、返金処理などの業務に分類されるような業務です。

EC・通販のフルフィルメントにおいてコールセンターは、顧客と直接コミュニケーションをとり、かつ様々な業務も行うことから非常に重要な役割を担っています。

※その他のフルフィルメント業務についても知りたい方はこちら:ネットショップのフルフィルメントとは?基本や成功ポイントを紹介

コールセンターの主な業務内容

コールセンター(コンタクトセンター)には、主にカスタマー対応、受注処理、テレセールスといった業務があります。以下では、それぞれの内容について見ていきましょう。

カスタマー対応

カスタマー対応では、顧客からの商品・サービスに関する問い合わせ、要望やクレームなどに対応します。

顧客が「なかなか電話が繋がらない」「オペレーターの対応が悪い」といった印象を受けると、顧客満足度が下がり商品・サービスの継続率が悪化してしまいかねないので、丁寧な対応を心がけましょう。

顧客に電話をかける前に、「いつ、どのような商品を購入したのか」「年齢」「家族構成」といった顧客情報が参照できると、顧客対応がよりスムーズに行えるようになるはずです。

クレーム対応ばかりだと、どうしてもオペレーターのモチベーションが低下してしまうのでオペレーターの業務内容を調整することも重要です。

受注処理

主に商品・サービスの受注処理を担います。

特にTVやラジオといった媒体に広告を出稿した際には、短時間で効率的に対応することが求められます。

テレセールス

オペレーターから顧客に直接電話をかけ、新商品の案内やセールスを行います。

コールセンターを設置するメリット

実はコールセンターには、顧客からの問い合わせ対応業務に加えて売上アップに繋げる役割もあります。したがってコールセンターは単なるコストなのではなく、売上を向上させる積極的な役割もあると認識しましょう。ここではEC・通販事業者がコールセンターを設置・運営するメリットについて紹介します。

アップセル、クロスセルなどによる顧客単価向上

オペレーターがより上位のプランを提案するアップセルや、顧客が購入する商品の他の商品も提案するクロスセルをオペレーターが行うことで、顧客単価向上が見込めます。

キャンセルの防止・定期解約の引き留めによる継続率の向上

注文のキャンセルや解約の理由をヒアリングし、可能であればキャンセルの防止や定期の引き留めを行いましょう。

例えば定期解約の理由が「商品を余らせてしまっている」という理由の場合、注文のスキップや一時休止ができることをお伝えし解約を阻止するといった対応をとります。

もし解約されてしまうとしても、なぜ解約してしまうのかという解約理由をヒアリングしましょう。解約理由を把握・蓄積することで商品やサービスの改善に繋げることができます。

顧客ロイヤリティの形成

オペレーターの対応次第で、顧客がショップに抱く印象は大きく変わります。

オペレーターが顧客の疑問やトラブルをスムーズに解消することができれば、ショップへの印象はよくなるでしょう。

具体的には、トークスクリプトを磨いたりFAQや商品情報をまとめたマニュアルを整備することで、対応時間の短縮や対応の質を向上させることができます。

コールセンター導入・運営の留意点

ここまでコールセンターの役割やメリットについて見てきましたが、実際にコールセンターの導入・運営にあたってはどのような点に注意すればよいのでしょうか。以下では、人材とセキュリティという2つの観点から解説します。

人材の確保・育成が必要

新たにコールセンター組織を立ち上げるのであれば、コールセンターを支える人材の確保・育成が必要です。

業務プロセスや利用するシステム、マーケティングなどを理解し、オペ―レーションレベルで管理することのできる優秀な人材はそう多くありません。また現場を担当するオペレーターも、人手不足や人件費の高騰などの要因により確保しにくい状況になっています。

コールセンターの核となるのが「人材」であるにもかかわらず、自社でコールセンター人材を確保・育成するのは難しいという課題があるのです。

セキュリティの確保

コールセンター業務では顧客の個人情報を扱うことになるので、セキュリティ面に十分配慮しなければなりません。

まず法律を遵守するために、企業あるいはセンターのセキュリティポリシーを定めます。セキュリティポリシーとは、保有する情報資産をどのような脅威からいかに守るのかについての方針や組織体制の規定です。

では具体的にはどのような対策を行うのがよいのでしょうか。ここでは、物理的セキュリティ、人的セキュリティの2つの観点から解説します。

物理的セキュリティ

物理的・技術的な手段でセキュリティを確保する手法としては以下のような例があります。

顧客データへのアクセス権は、必要最低限の人員のみに付与する
IDカードなどを活用し、入退室を管理する
重要情報については専用の端末のみからアクセス可能とする

人的セキュリティ

物理的・技術的な手段だけでは情報漏洩を完全に防ぐことはできないので、以下のような対策も行いましょう。

個人情報が含まれた書類やデータの運用ルールを定め、周知する
離席時にはデスクに顧客情報が記載された紙を残さない/PC画面を閉じる
メールやFAXの送信先を間違えないようにする

コールセンター運用のポイント

ビジネスモデルや提供サービス内容に合わせた業務設計を行う

ビジネスモデルや提供しているサービス内容によって、コールセンターをどのような目的で設置すべきか、そしてどのような業務を行わなければならないかが変わってきます。

例えば、サービスのターゲット層が若年層であればメールやチャットでの対応がメインでも問題ないかもしれませんが、50~60代以降の方が主要ターゲット層の場合「電話で直接話した方が安心する」といったニーズが強いので、電話対応をメインとするのが望ましいでしょう。

また、コールセンター業務に関するシステムの設計・導入が必要となるでしょう。

このような類のシステムには、コールセンターと通信会社を繋ぐ回線や端末といった通信システムや、顧客から電話がかかってきた際に個人情報・購入情報を確認できる機能が備わったCTI(Computer Telephony Integration)システムなどがあります。

近年ではオペレーターが年齢や性別、直近で何を購入したかなどの個人情報、購入履歴を参照しながら対応することが当たり前となっています。したがって注文や決済を担う受注管理システム、決済カートシステムとの連携も必要です。

適切な管理指標(KPI)を設定する

コールセンター運営・管理においても結果を管理するための指標が存在します。ここでは、品質、生産性、収益性といった3つの観点からコールセンターの管理指標(KPI)の例を紹介します。

品質

途中放棄呼率:オペレーターに繋がらずに、待っている間に顧客が電話を切った割合。一般的に5%程度が目安
平均応答時間:着信してからオペレーターが応答するまでの時間
設定時間内応答率:設定した時間内に何%のコールに応答したかを表す指標
一次対応完了率:転送や掛け直しをすることなく1回の受信コールで顧客の要件が充足される割合

生産性

平均通話時間:オペレーターが応答してから会話が終了し切断するまでの時間
平均後処理時間:コール切断後、そのコールに関する応対状況の入力や伝票起票処理などの後処理に要する平均時間
時間あたり応答件数:一定時間内に応答したコールの数
稼働率:オペレーターの着席時間のうち通話や後処理などの本来業務に費やしている時間の割合

収益性

「受注率」「時間あたり売上高」「コールあたり売上高」などといった指標が利益貢献を評価する指標です。

オペレーターの管理指標に関しては、表面的な生産性のみに注目しないように留意しましょう。例えばあるオペレーターの応答件数が少ないといった場合でも、顧客との平均通話時間が長く受注数が多ければそのオペレーターは利益に貢献していると言えるでしょう。

※参考:菱沼千明『新版 コールセンターのすべて―導入から運用まで―』リックテレコム、2006年、70-78頁。

アウトソースを検討する

必ずしも自社でコールセンターを運営する必要はありません。以下のような観点でインハウス(自社)でコールセンターを運営するか、アウトソース(外部委託)するか決めましょう。

自社内にコールセンター運営に関する専門的なノウハウが蓄積されているか
自社でコールセンター人材を確保・育成できるか
法的やセキュリティの観点で制約がないか

コールセンターの代行業者に委託する際のポイント

コールセンターのアウトソースを行う際には、以下のような点について気を付けましょう。

自社の体制に適した代行業者を選定する

自社のビジネスモデルに合わせたコールセンターを選定しましょう。

料金が安いかという観点以外にも、EC・通販ビジネスの実績があるか、席数や時間帯によるオペレーションの変動に対応可能かといった軸でも選定するのがポイントです。

事前に目標値を設定し、契約内容に盛り込む

先述したコールセンターの品質、生産性、収益性に関する指標の目標値を設定した後、アウトソーサー(委託先)が達成しなければならない目標値、委託内容や業務責任などを契約内容に盛り込みます。

委託料金の支払額を明確化する

委託料金に関して、どのサービス提供が料金の支払い対象になるのか、また対象以外の業務が発生した場合にどのような算定基準で料金を算出するのかを明確にしておきましょう。

まとめ

本記事では、EC・通販事業におけるコールセンターの役割、業務内容、メリットなどについて紹介しました。

コールセンターは顧客と直接繋がる場所であるため、その質が顧客満足度や収益に直結します。そのためコールセンターを運営あるいは委託する際には、事前に管理指標や業務フローを定め適切に運営・管理していくことが重要となるでしょう。

※参考書籍
新井亨『「サブスクD2C」のすごい売り方――利益率80%以上の最強ビジネスモデル』フォレスト出版、2021年
岩永洋平『通販ビジネスの教科書』東洋経済新報社、2016年
菱沼千明『新版 コールセンターのすべて―導入から運用まで―』リックテレコム、2006年

※EC・通販用カートシステムとコールセンターの連携事例について詳しく知りたい方はこちら:カートシステムに合わせたコールセンター構築・運営を実現:あじかん美食生活

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