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定額の料金を支払うことで、毎月商品を手に入れたり、サービスを継続的に利用したりすることができるサブスクリプション(サブスク)サービス。利用されている方も多いのではないでしょうか。
便利なサブスクが普及する一方で、サブスクの契約に関するトラブルも増加しています。全国の消費生活センターには、サブスクに関する相談が2021年度以降毎月500件程度寄せられているようです。
※参考:独立行政法人国民生活センター「「解約したはず!」「契約してない!」と思い込んでいませんか? 予期せぬ“サブスク”の請求トラブルに注意!」
特にインターネット上でサブスクを契約したが「契約内容や料金詳細をよく確認せずに申し込んでしまっていた」という事例が発生してしまっています。そのような状況が問題視され、最近では消費者庁をはじめとして行政機関が注意喚起や法規制の厳格化を進めています。
本記事では、サブスクの契約時や解約時に発生するトラブルの具体的な事例と、消費者と事業者それぞれが気をつけるポイントについて紹介していきます。
サブスクリプション契約でよくある消費者問題
サブスクを契約すると、仮にサービスを全く利用していなくとも料金が発生し、解約手続きを行わない限りは契約は自動で更新され支払いも続くことになります。
サブスクには「契約がずっと続く」という特徴があるため、トラブルが発生しやすいと言えるでしょう。
では具体的にどのようなトラブルがあるのでしょうか。以下ではサブスクの契約時と解約時に起きる問題を紹介します。
契約時の問題:意図しないサブスクリプション契約
サービス契約時や契約内容に関する消費者トラブルには以下のようなものがあります。
• 1カ月無料のコンテンツ配信サービスを1カ月だけと思って申し込んだら、翌月から自動更新されていた。
引用:消費者庁「第35回インターネット消費者取引連絡会(2019年12月9日)資料2 国民生活センター報告資料」
• ネットで映画配信サービスの30日間無料配信を申し込んだ。即日に解約したつもりが、3カ月後に料金が請求され続けていることに気が付いた。
• 1年前に、動画配信サービスの1カ月無料期間を利用した。解約の申し出をしないと有料になると知らず、1年間クレジットカードで料金を引き落とされた。
• 動画配信サービス会社からの請求がクレジットカードから引き落とされている。契約した覚えがない。
「〇ヶ月間無料」「△日間無料トライアル」といったオファー(条件の提案)を皆さんも受けたことがあるのではないでしょうか。
そのようなオファーをきっかけにサービスを申し込み、「無料期間内に解約を忘れていていつの間にか有料プランに移行してしまっていた」「自動的に有料サービスに移行することを知らなかった」といったトラブルに遭うケースがあります。
解約時の問題:解約手続きが面倒、解約できない
サブスクの解約時に発生する消費者問題には以下のようなものがあります。
• 半年前にスマホからスポーツの有料動画配信サービスを契約し、2カ月後に解約した。解約後も料金が引き落とされている。さかのぼって返金してほしい。
引用:消費者庁「第35回インターネット消費者取引連絡会(2019年12月9日)資料2 国民生活センター報告資料」
• 半年前に映像配信サービスに加入した。退会したつもりが、退会になっていなかった。退会方法がわかりにくく、退会するのに非常に時間がかかった。
• 1年前に映像見放題のサイトに登録した。しかし、パスワードを忘れて退会できず、サイトの電話番号もわからない。
• 動画配信を解約したいが、メールアドレスやパスワードのアカウント情報を忘れ、マイアカウントに入れないため解約できない。退会の手続きが複雑で困っている。
「解約したつもりが解約できておらず月額利用料金を支払い続けていた」、「解約方法がわからず問い合わせ先にも連絡がつきにくい」といったサブスクの解約トラブルは近年とくに問題視されており、そのため特定商取引法の厳格化などが勧められています。
例えば改正特定商取引法が令和4年(2022年)6月1日に施行されたことにより、事業者はサブスクの申込み時に最終確認画面において料金や解約条件、契約の自動更新の有無などを明示しなくてはなりません。
有料プランへの移行時期や価格といった事項を誤認して申込みをした消費者は、契約を取り消せる可能性があります。後にも詳しく紹介しますが、もしサブスクの契約で困った際には消費者ホットライン「188」に相談をすることができます。
※参考
消費者庁「オンライン契約により提供されている事業者様へのお知らせ」
特定商取引法ガイド > 通信販売
トラブルに遭わないために契約前にチェックすべきポイントは?
それではトラブルに遭わないようにするために、契約前にどのような点に気をつければよいのでしょうか。独立行政法人国民生活センターは以下のようにアドバイスしています。
• 「無料体験」「無料トライアル」の広告・表示をきっかけにサブスクを申し込む際には、契約条件をよく確認してから契約しましょう
引用:独立行政法人国民生活センター「「解約したはず!」「契約してない!」と思い込んでいませんか? 予期せぬ“サブスク”の請求トラブルに注意!」
• 解約する場合は、事業者の公式ホームページなどで手続き方法を確認しましょう
• 申し込む前に、契約の相手方の事業者名、サービス内容、解約方法を確認しましょう/申し込み時の登録情報は解約手続きに必要になりますので忘れないようにしましょう
• 利用していないサブスクの支払いがないか、クレジットカード等の明細は毎月確認しましょう
• 不安に思った場合や、トラブルが生じた場合は、すぐに最寄りの消費生活センター等へ相談しましょう
他にも、もし身近にそのサービスを使っている人がいればサービスの感想を聞いてみたりSNSなどでサービスの口コミを調べてみたりするのもよいかもしれません。
サブスクリプション契約でトラブルに遭った場合の対処法
注意していてもトラブルに巻き込まれてしまうということはあると思います。
以下では、サブスクに関するトラブルの対処法について紹介します。
よくある質問(FAQ)を確認する
「いつから有料になるのか」「解約するにはどうすればいいのか」といった疑問がある場合、まずは利用しているサブスクのWebサイトに「よくある質問(FAQ)」や「Q&A」、「ご利用中の方」といったページを確認してみましょう。
カスタマーサポートに問い合わせる
サイトを調べてみてもよくわからないという場合は、電話やメールなどでそのサービスのカスタマーサポートに問い合わせてみましょう。
消費者センター等に相談する
もしトラブルを解決できない場合は、市町村や都道府県の消費生活センター等に相談しましょう。
「誰もがアクセスしやすい相談窓口」として消費者ホットラインが開設されています。「188(いやや!)」番にかけると最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等が案内されます。
参考:独立行政法人国民生活センター「全国の消費生活センター等_国民生活センター」
事業者がサブスク契約で気をつけるべきポイント
先述したように、消費者トラブルが問題視され、行政がサブスクの法規制を厳格化してきています。それでは、サブスク事業者はサブスクサービスを提供する上でどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
以下ではサブスク・定期通販事業者が注意すべき法規制について紹介します。
特定商取引法を順守し、サブスク(定期コース)条件を明記する
サブスクの契約条件に関して気をつけるべき法律は「特定商取引法」です。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールとクーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
引用元:特定商取引法とは|特定商取引法ガイド
サブスク事業者が特に注意すべきなのは、令和4年(2022年)6月1日に施行された改正特定商取引法の内容です。サブスクリプションサービスを申し込む際の “最終確認画面”においてサービスの期間や回数、料金を簡単に確認できるように表示するようにといった対応が要請されています。
サブスクリプションサービスは特定商取引法では「通信販売」に該当する取引です。消費者庁が下記サイトに「通信販売」のガイドを掲載しているので、その文言や解説資料を確認しておきましょう。
※参考
消費者庁「オンライン契約により提供されている事業者様へのお知らせ」
特定商取引法ガイド > 通信販売
商材ごとに定められた法律・規制を順守する
販売する商材によっては、その商材に関連する法律を守ったり届出を出したりといったことが必要になります。
例えば化粧品を販売する場合は薬機法の遵守や化粧品製造販売業許可の取得が、食品の場合は食品衛生法の遵守が必要です。
※化粧品/コスメに関する法律について気になる方はこちら:化粧品をネットショップで販売するには?必須の手続きや成功のポイントについて解説
※食品や健康食品に関する法律について気になる方はこちら:食品のネット通販で必要な許可は?押さえておきたい法律や届出について解説
サブスク事業者は解約理由をもとにサービスを改善できる
サービスの解約はサブスク事業者にとっては、収益が下がるという点では避けたいことでしょう。しかしサブスクサービスを運営する以上、一定の解約(チャーン)が出てしまうことは仕方のないことです。
ただ、サービス解約にはポジティブな側面もあります。それは解約理由を知ることでサービス改善に役立てることができるという点です。
例えばサブスクの解約理由が「商品が余ってしまった」という声があった場合は、どうすればよいでしょうか。
・商品の使い方をわかりやすく解説するチラシを同梱物に入れる
・サービスの「解約」ではなく「休止」も選択できるようにする
・使用方法を解説した画像や動画を配信し、使用量や使用頻度の目安を伝える
以上のようなサービスの改善案を考えることができるでしょう。
まとめ
本記事では、サブスクの契約時や解約時に発生するトラブルと、消費者と事業者それぞれが気をつけるポイントについて紹介しました。
魅力的なサブスクが増えてきているからこそ、利用開始時には特に注意して契約をしてください。
※関連資料
サブスクビジネスの立ち上げについて関心のある方はこちら:サブスクビジネスの始め方と成功の秘訣
D2C×サブスクの成功事例について知りたい方はこちら:サブスク/定期通販の成功事例集