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フリーミアムとは、基本的なサービスや機能は無料で提供し、一部サービスや機能を有料で提供するといったビジネスモデルです。このビジネスモデルはソフトウェアサービスやコンテンツ配信サービスなどで採用され、成功を収めています。
本記事ではフリーミアムについて知りたい方のために、フリーミアムの定義や特徴、メリットとデメリット、成功事例と失敗事例など幅広く紹介します。
フリーミアムとは?
フリーミアム(freemium)とは?
「フリーミアム(freemium)」は「free(無料)」と「premiun(上質な、高品質な、割増金で)」からなる造語で、基本的なサービスや製品は無料で提供し、より高品質サービスや機能は有料で提供することによって収益を得るビジネスモデルのことを指します。
簡単に言うと、フリーミアムのサービスでは「基本サービスは無料、一部サービスは有料で提供される」ということです。
このように、無料のサービス提供により利用者側の「使ってみるハードル」「やってみるハードル」を下げることで新規顧客獲得コストを減らしつつユーザー母数を増やす。そこからプレミアム(有償版)に移行してもらい高機能なサービスを使い続けてもらうことで収益を上げるようなサービス展開は「フリーミアムモデル」「フリーミアム戦略」と呼ばれます。
フリーミアムの特徴
フリーミアムの特徴は以下のようにまとめることができます。
・サービスの基本機能は無料で提供する(利用者の獲得)
引用元:根来龍之他『この一冊で全部わかる ビジネスモデル 基本・成功パターン・作り方が一気に学べる』SBクリエイティブ、2020年
・高度な機能や高品質なサービスは有料で提供する(収益源)
物理的なモノを配送するのに比べて、ソフトウェアやデジタルコンテンツ(例えば動画、音楽など)はWeb経由で提供されるため提供コストがほとんどかかりません。よってソフトウェアやデジタルコンテンツはフリーミアムとの相性がよいとされています。
例えばSaaS(サース)と呼ばれるソフトウェアサービスではフリーミアムが採用されることがあります。まずは無料で一部基本機能を利用してもらい、その後有料の上位のプランにアップグレードしてもらうことを狙った戦略です。
サブスクリプション(サブスク)との違い
そもそもサブスクリプション(subscription)サービスとは、「定額の料金を支払うことで、毎月商品を手に入れたりサービスを継続的に利用したりすることができるようなサービス」のことです。
一方、フリーミアムサービスは「無料で使えるプランと、一部有料プランがあるサービス」です。
そのためサブスクリプションとフリーミアムは異なる意味の用語ですが、サブスクリプションとフリーミアムが両方採用されているサービスは多くあります。
例えば人事・労務手続きを業務効率化するSmartHR(スマートエイチアール)では、「¥0プラン」としてフリーミアムと、サブスクリプション(定額での有料課金)が採り入れられています。
また、ビジネスチャットツールを提供するChatwork(チャットワーク)でも¥0プランと、ユーザー数制限やストレージ容量が増えるなどの月額¥500の「ビジネス」プラン、さらにセキュリティ・リスク管理や管理者向けサポートを受けられる月額¥800の「エンタープライズ」プランが提供されています。ユーザーは課金することで使える機能や容量を増やせます。※2023年1月現在の料金
「サブスクリプション」と「フリーミアム」を組み合わせることで、事業者は新しいユーザーを増やしつつ、安定した収益を得ることができるでしょう。
※参考
¥0プランについて|SmartHR
プラン・料金 | ビジネスチャットならChatwork
※サブスクについてさらに詳しく知りたい方はこちら:サブスクとは?メリットやデメリット、人気サブスクリプションサービスもご紹介
フリーミアムで収益を上げるための4つの型
ここでは、フリーミアムサービスで収益を上げるための4つの型を紹介します。基本的には以下の4つの型の中から一つを選んだり、組み合わせたりすることでユーザーの課金条件を設計することになります。
機能追加型・機能制限型
機能追加型・機能制限型では、ユーザーが課金すると、無料版よりも機能が追加される、あるいは制限されていた機能が利用できるようになります。
容量追加型
容量追加型では、課金すると無料版よりもデータの利用量や一日のダウンロード数を増やすことができます。
会員限定型
会員限定型では、ユーザーは課金することで会員限定のコンテンツを視聴できる、お得な特典(限定クーポンなど)がもらえる、サービス利用画面に広告の表示がされなくなるなどのメリットがあります。
都度課金型
都度課金型では、ユーザーは有料コンテンツや有料機能を使うときにだけ課金します。
フリーミアムを導入するメリットとデメリット
事業者にとってのフリーミアムのメリット
新規利用者(新規ユーザー)を獲得しやすい
無料で利用できるのでサービスを利用するハードルが低くなるため、新規利用者(新規ユーザー) を獲得しやすくなります。
「無料だけど便利でおもしろいサービスがある」とサービスの口コミが広がる可能性がある上に、仮に口コミが広がった際に「無料なら試してみよう」という動機で利用者が利用しやすくなるのもフリーミアムのメリットです。
サービス改善のフィードバックを受けやすい
無料利用者のおかげでユーザーの母数が確保でき早い段階で利用データを蓄積できるため、サービスの改善点を見つけやすくなるでしょう。
利用者がサービスに課金するハードルを下げられる
利用者は無料プランで基本的なサービスや機能を既に利用しているので、納得感を持って有料プランや追加課金をしやすくなるはずです。
事業者にとってのフリーミアムのデメリット
利益を出す(黒字化する)まで時間がかかる
無料ユーザーの割合が想定よりも多すぎると、黒字化するまでの時間がその分長くなってしまいます。そのためユーザーに課金してもらうための仕組みづくりや黒字化までの資金を確保しておく必要があるでしょう。
提供する商品やサービスによっても異なりますが、一般にフリーミアムサービスの有料利用者の割合の目安は5%と言われています。
向いている事業が限定されている
フリーミアムでは大多数のユーザーには無料で商品やサービスを提供することが前提となります。そのため商品の提供自体にコスト(生産コストや在庫管理コストなど)がかかるような物販や製造業には向いていません。
フリーミアムの成功事例と失敗事例
フリーミアムの成功事例
Dropbox(ドロップボックス):容量の追加
フリーミアムの成功事例としてよく挙げられるのがDropboxです。
Dropboxは、ファイルのオンラインストレージサービスです。
無料版と有料版では、ストレージの容量やファイルの編集権限に差があります。
例えば個人用のBasicプラン(無料)ではユーザーは一人、ストレージは2GBまでですが、familyプラン(有料)ではユーザーは最大6人、ストレージは2,000GBまで使用できます。
Dropboxの有料版を購入しているユーザーは全ユーザーのうちの約2.5%と言われていますが、いまなお成長を続けています。
YouTube(ユーチューブ):広告なし、利用機能の追加
YouTubeは多くのユーザーによって作られた、幅広いジャンルのコンテンツを提供しており、多くの視聴者を獲得しています。
YouTubeは無料で視聴するユーザーに対しては広告を表示することで収益を上げていますが、一方で有料の「YouTube Premium」サービスも提供しています。
YouTube Premiumに加入したユーザーは、広告なしで動画が視聴でき、オフライン再生やバックグラウンド再生ができるようになります。
YouTubeは、無料ユーザーと有料ユーザーの両者から収益を上げられる仕組みを構築しているのです。
フリーミアムの失敗事例
New York Times Online(ニューヨークタイムズオンライン):課金条件設定の失敗
フリーミアムの失敗事例としてよく挙げられるのが、 New York Times Onlineのフリーミアムを採用し始めた初期の事例です。
New York Times Onlineは、2011年にフリーミアム戦略を導入しました。その内容は、「月間20コンテンツ以上の閲覧は有料会員限定」というものであり、思うように会員数が伸びませんでした。
後に「あえて閲覧制限を10コンテンツまで落とす」施策がきっかけで会員数が順調に伸び始めました。
現在(2021年12月末時点)では電子版の有料読者数は約580万人にまで拡大し、成功を収めています。
※参考:NYタイムズ、総読者数1000万人突破 3年前倒しで達成
niconico(ニコニコ):競合サービスの台頭による有料サービスの魅力低下
ドワンゴが運営する動画配信サービスniconicoは、有料のプレミアム会員数が2017年以降伸び悩んでいます。
背景としては、YouTubeのように他の動画配信サービスが台頭してきたことによって、有料会員になるメリットが相対的に薄れてきたことが挙げられるでしょう。
フリーミアムが成立するための条件とは?
有料サービスと無料サービスで明確な差をつける
フリーミアムサービスを成立させるためには、有料サービスの利用者を確保しなくてはなりません。有料ユーザーを増やすためには、無料版や他社が提供する類似サービスと比べて、ユーザーが課金するメリットのあるサービスを提供する必要があるでしょう。
有料版を大きな追加コストをかけずに提供する
無料版を提供するのにかかるシステム開発費や人件費、広告宣伝費以上に大きな追加コストをかけずに、有料版(プレミアム版)を提供できるかが重要です。というのも、無料版のサービス提供に加えて有料版のサービス提供にも大きなコストがかかるのであれば収益性が低くなってしまうからです。
フリーミアム以外に収益源を確保する
収益性を高めるために、有料の限定コンテンツに都度課金してもらったり、フリーミアム以外の収益源(例えば広告収入)を得られるような仕組みを採り入れたりするとよいでしょう。
まとめ
「フリーミアム(freemium)」とは、基本的なサービスや製品は無料で提供し、より高品質なサービスや機能は有料で提供することによって収益を得るビジネスモデルのことです。特にソフトウェアやデジタルコンテンツを提供するサービスで採用されています。
フリーミアムサービスを成立させるには、ユーザーに対して有料版を利用するメリットを提示することや、どこでいくら課金してもらうのかといった収益化の仕組みづくりを行うことが重要となるでしょう。
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