目次
近年、注目が集まっているのがサブスクリプション(定額制)ビジネスです。
サブスクリプションビジネスは、定額制サービスと同じように認識されることも多く、既存のビジネスモデルと共通している面もありますが、他にはない特徴もあります。
今回は、海外と日本でのSaaS型のサブスク、デジタルコンテンツのサブスクの成功事例と日本におけるサブスクリプションサービスの状況をご紹介します。
サブスクリプションを導入するのであれば、効率的に導入するためのポイントを経営に取り入れることが重要です。導入を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
※サブスク/D2C/定期通販に特化したクラウドシステム「サブスクストア」のサービス紹介資料はこちら
サブスクリプションの現状
2019年11月に、年末の風物詩でもある「ユーキャン新語・流行語大賞」にサブスク(サブスクリプション)がノミネートされました。
このことからもわかるように、サブスクという言葉が市民権を得て普及してきています。
サブスクという言葉自体を知らなくても、どのようなサービスのことかを伝えると「実は使っていた」という方が多いくらいに生活に浸透しているものになっています。
身の回りのサブスクリプションサービスですぐに頭に思い浮かぶのは、
・動画配信サービス
・音楽配信サービス
・電子書籍や漫画の配信サービス
・ソフトウェアサービス
かと思いますが、上記のサービス以外にも、例えば、家具のサブスクのようなモノのサブスクもあります。
サブスクリプションサービスは一般的に、「いつでも開始でき、いつでもやめられる」というように、簡単にサービスが開始できるのと、解約金がかからないことを原則としています。
消費者にとっては「高い商品を購入せずに、無料や低価格でお試しでサービスを利用できる」といったように、消費者にとってメリットが多いサービスとなっていることから利用者が急激に高まっていると考えられます。
また、サブスク自体もCMやテレビ番組で多く取り上げられ認知度が広がっていますが、いまではSNS経由での認知が最も高くなりました。
サブスクリプションサービスの拡販においては、SaaS(サース)系のBtoCサービスは「フリーミアム戦略」をとっている企業が多いのが特徴です。フリーミアム戦略とは、「フリートライアル」でまずは体験してもらい、その後一部の顧客に上位のプランにアップグレードしてもらうという戦略です。
※サブスクリプションについてさらに詳しく知りたい方はこちら:サブスクとは?メリットやデメリット、人気サブスクサービスもご紹介
海外のサブスク事情と事例
サブスクリプション型サービスは米国から展開されましたが、ここ数年で更にサブスクリプション型モデルが急拡大しています。
米国のサブスクリプション市場の規模は、2011年度は5,700万ドルでしたが、2016年には26億ドルにまで伸びており、2020年度のサブスクリプションビジネスに参入した企業の売上高の年平均成長率は18%超と急成長しています。
参考:サブスクビジネス参入企業は新型コロナに強い、売上高の年平均成長率も18%超に
アメリカなど欧米諸国では最先端のサブスクリプションサービスが次々と展開されているため競争が激化しており、サブスク事業者は日々サービス改善と新たな展開を模索していかなくてはならない状況となっています。
成功しているサービスの特徴としては、まだ誰もやっていないときに始めた(先行者利益を得た)という要素が大きいですが、フリーミアム戦略やフリートライアルでまずはユーザー数を増やしていること、さらに複数のサービス内容に合わせ料金プランを設計をしていることも共通点として挙げられます。
以下では具体的に、成功を収めているサブスクサービスの事例を紹介します。
デジタルコンテンツのサブスク
Netflix(ネットフリックス)
Netflix(ネットフリックス)は、定額制の動画配信サービスです。
受賞歴のあるドラマや、他の会社にはない映画、アニメ、ドキュメンタリーなどオリジナルの独占配信コンテンツを充実させており、幅広いコンテンツを積極的に配信することで差別化を図っています。
会員数は世界で約2億人となっています。日本国内ではラインナップの充実やオリジナルコンテンツで人気を集め、定額制動画配信の顧客満足度は第1位となっています。
一定期間アクセスしていないユーザーにはアカウントをキャンセルするかの確認をして、反応がなければアカウントをキャンセルする、といったユーザー目線に立った対応などにも取り組んでいます。
Amazon(アマゾン)
Amazon(アマゾン)は、Amazon Prime Video、Amazon Music、Kindle Unlimitedといった、動画・音楽・電子書籍の配信サービスなどを提供しています。
Amazonプライム会員になると追加料金なしで音楽、動画を無料で視聴、レンタルまたは購入ができます。
国内では提携している電力、ガス会社のプランの入会特典としてAmazonプライムの年間費が無料になるサービスなどセット契約も提案しています。
Google(グーグル)
Googleはアクセス分析ツールやカレンダー、メールなど、ビジネス用途のツールを複数提供していることから、ビジネス分野において重要なツールであり続けると予想されます。
一般消費者向けのデジタルコンテンツのサブスクでは、YouTube Premiumがあります。YouTube Premiumでは広告表示がない、オフライン再生ができる、YouTube Music Premiumuの利用もできる、といった無料版との違いがあります。
加えて写真の保管などに使える生活系ツールだとGoogle One、ビジネスであればGoogle Workspace(旧称G Suite)など、エンタメのデジタルコンテンツだけでなく、生活に関わるSaaS、PaaS系サブスクもあります。
Googleは課金形態としてサブスクリプションモデルを採用し、堅調に売上を出しています。
※Googleの親会社であるAlphabetの事業もここで紹介しました。
SaaS型のサブスク
Adobe Systems(アドビシステムズ)
Adobe Systems(アドビシステムズ)は、Photoshop、 Illustrator、Premiere Proなど画像・動画編集・デザインなどのクリエイティブ業務に欠かせないAdobeのソフトウェアを提供しています。
過去はソフト単体で販売していましたが、2012年にサブスクリプション型での販売(Creative Cloud)へとシフトチェンジを行ったことで、利用者が増え年率20%を超える成功を成し遂げました。
サブスク型にしたことで、ソフトウェアのバージョンアップが短いサイクルで行われ、ユーザーが新しい機能を利用できるようになるまでの期間が圧倒的に短くなりました。そのため、よりユーザーにとって便利なサービスになりました。
クリエイティブ向けソフト以外にもマーケティングツールの「Experience Cloud」、書類や契約業務のオンライン化ツールの「Document Cloud」といったビジネスで利用するサービスも提供しています。
Microsoft(マイクロソフト)
マイクロソフトは、サブスクリプション1本化ではなく、パッケージとの両軸でサービスを提供していることが特徴と言えるでしょう。
パッケージが買い切りで追加料金が発生しないのに対し、サブスクリプションは月額料金または年額料金を支払う代わりに常に最新のソフトウェアを利用できるというメリットがあります。
サブスクリプションサービスの「Office 365 Solo」のユーザーになれば「Office 365サービス」を利用できることに加えて、1TBのクラウドストレージの利用や毎月60分間のSkypeでの通話などが可能などクラウドサービスの利用権が与えられます。
Dropbox(ドロップボックス)
Dropbox(ドロップボックス)は、全世界で5億人が利用しているオンラインストレージサービスです。
指定した人のみ閲覧ができないなど、データの共有範囲が絞れるのが特徴です。
個人向けとチーム向けで機能の差をつけたサービスプランを作り販売しています。
無料で2GBまで利用可能で、足りない場合は複数の料金プランから使用頻度や用途に合わせて有料プランを利用してもらいます。無料のままでも友人にDropboxを紹介するなどすれば、友人含め互いに最大16GBまで増やすことが可能です。
Evernote(エバーノート)
Evernote(エバーノート)はオンライン上でメモを取ることできるサービスで、スマートフォンのカメラで紙文書をデジタル化できるなど、便利な機能が揃っています。ネット環境に接続ができなくても利用ができるのも便利です。
無料のベーシックプランの他にプレミアムプランとビジネスプランが用意されており、ビジネスプランでは共同作業が可能です。プレミアムプラン、ビジネスプランどちらも無料トライアルでお試しから利用ができます。
日本のサブスク事情と事例
近年、海外でのサブスクサービスが日本にも導入されるようになってきました。一方日本のデジタルコンテンツ提供企業は少ない現状です。
デジタルコンテンツのサブスクが少ない理由としては、NETFLIXやAmazon Prime Videoなどの海外サービスがローカライズされ定着し、日本でも利用顧客を伸ばしているという理由が挙げられるでしょう。
ただ、漫画の配信サービスに関しては、デジコン系サブスクでも日本企業が強いです。
SaaS型サブスクでは会計、業務管理、Webサイト運用や制作に関わるツールなど日本企業が提供しているサービスも多くあります。
また、耐久消費財などモノのサブスクは日本の商習慣・生活習慣に合わせた独自のものが多いため、日本企業発信のサービスが多くを占めます。
以下では日本でのデジタルコンテンツ、SaaS型およびモノ・コトのサブスクの事例を紹介します。
デジタルコンテンツのサブスク
LINE MUSIC(ラインミュージック)
LINE MUSIC(ラインミュージック)は、LINEが提供する定額制の音楽配信サービスです。
プレイリスト作成やミュージックビデオの視聴ができます。またLINEと連携しお気に入りの曲を着信音や通知音に設定できる点が支持されています。
無料プランも含め、3つのプランがあります。
Pravi(パラビ)
Pravi(パラビ)は、ドラマ、映画などの動画配信サービスです。
他の動画配信サービスと比べると月額料金がやや高めですが、スポーツや音楽の生配信もありリアルタイムで視聴ができるのが特徴です。また、経済番組も配信されているので、ニュースを見逃した方が通勤中や隙間時間に視聴できるという点で人気です。
※動画のサブスクについてさらに詳しく知りたい方はこちら:動画のサブスク5選!人気の動画配信サービスの概要や選ぶポイントを紹介!
SaaS系のサブスク
KINTONE(キントーン)
KINTONE(キントーン)は、クラウド型の業務アプリケーションを簡単に作成できるサービスです。業務や仕事内容を自社や部門に合わせた業務システムを複雑なプログラミングなしに作成できます。
大手企業から中小規模の企業、地方自治体などさまざまな企業や法人で利用されており、利用企業数は15,000社となっています。特徴としては、打ち込んだ内容をメールや他のチャット機能を利用することなく、テーマごとにスレッドを立ててやりとりができるため、連絡の手間が省くことができるという点です。
freee(フリー)
freee(フリー)は、個人事業主から中規模法人まで対応した、クラウドの会計や人事労務ソフトを提供しています。個人向け、20名以下の法人、21名以上の法人と大きく3つのターゲットそれぞれに合ったサービス提供を行っています。
これまでオンプレミス型で販売していた会計ソフト市場も、クラウドかつサブスク型の提供にシフトしていっています。
モノ・コトのサブスク
サブスクというとデジタルコンテンツやSaaS型のサブスクの印象が強いですが、モノやコトのサブスクも増えています。
ここでは、買い替え頻度の少ない耐久消費財、買い替え頻度の少ない非耐久材、また飲食業のサブスクの事例を見ていきましょう。
耐久消費財のサブスク事例
KINTO(キント)
トヨタ自動車株式会社が展開する「KINTO」は、2018年12月に個人向けの車のサブスクリプションサービスとして発表されました。その内容は、保険やメンテナンス、税金などをパッケージ化した月額定額制サービスです。
「筋斗雲」から「KINTO」と名付けられたように、好きな車や乗りたい車を自分の好きなように乗り、不要なときには返却可能できるというコンセプトです。必要なときにすぐに現れて利用することができ、好きなように移動できるのは、まさに筋斗雲のようですね。
シェアリングサービスの誕生や運転自動化の実験など、自動車業界はまさに変革の中にいます。新しい技術が次々と生まれ、それによって車の概念が大きく変わろうとしているのです。
Subsclife(サブスクライフ)
Subsclife(サブスクライフ)は、家具・家電のサブスクリプションサービスです。
人気ブランドの家具やデザインの家電が月額500円から利用可能です。利用期間は3ヶ月から24ヶ月の間とライフスタイルの変化に合わせて新品の家具、家電が届きます。
ライフスタイルに合うかどうか不安な方でも、1個からレンタル可能なので利用しやすい仕組みとなっています。
利用終了後は、返却、購入、継続と選べるので、気に入ったものは購入ができるので、処分の手間もかからず気軽に利用ができます。
※その他家具のサブスク事例について知りたい方はこちら:家具のサブスク/レンタルサービスの選び方は?おすすめの家具サブスク/レンタルサービスを紹介!
非耐久財のサブスク事例
airCloset(エアークローゼット)
airCloset(エアークローゼット)は、月額制で借り放題の服のサブスクリプションサービスです。
airClosetは30万着の中からレンタルでき、リクエストを元にプロのスタイルが選んでくれるので自分では選びにくいコーディネートを届けてくれます。
服のレンタルのサブスクリプションサービスは今や定番!?服をサブスクリプションで提供するポイントを知ろう!で紹介しているように、服を捨てることができず悶々と悩む時間、整理する時間、お手入れの時間とコストから解放されるなどメリットがあります。
飲食のサブスク事例
coffee mafia(コーヒーマフィア)
coffee mafia(コーヒーマフィア)は、カフェのサブスクです。
カフェのサブスクの仕組みやその特徴・メリットとは?で紹介しているようにカフェのサブスクとは、毎月の月額料金として一定の料金を支払うことでその期間中にさまざまなサービスを受けられるカフェのことをいいます。
コーヒーマフィアでは複数の定額コースが用意されており、コースによって詳細は異なりますが1来店につきコーヒーやドリンクが1杯無料でもらえるといった内容です。
※その他の飲食のサブスクサービスについて知りたい方はこちら:飲食店のサブスク事例10選!サブスク×飲食に取り組むメリットも解説
日本のサブスクの展望
国内のサブスクリプションサービス市場は、2020年度で8,759億円、2022年度には1兆円に拡大すると予想されています。
参考:矢野経済研究所「サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)」
そんなサブスクリプションサービスですが、今後の日本で提供されるサービスは、ただ商品を届けるだけの内容に留まらないだろうと考えられています。
つまり、商品を使う以外にも、「商品を選ぶ手間を省いてくれる」「自分の好みに合う新商品をレコメンドしてくれる」など、新しい付加価値を付けて提供されることが必要であり、そういったサービスは増えていくだろうということです。
サブスクリプションビジネスは、いかに継続してもらえる「価値のあるモノとコト」の提供とあわせて、購買体験や購買後の対応も含めた価値提供が重要なポイントになっていくでしょう。