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近年、様々なネットショップ開業や運営に関するサービスが発展してきたことによって、ネットショップを新しく開業するハードルが下がってきました。
しかしネットショップに参入したとしても、そのうちの約50%は10年以内に撤退してしまうと言われています。撤退を避け、ショップの売上を伸ばしていくには、一体どうしたらよいのでしょうか?
ネットショップで失敗しないために必要なのは、自社のネットショップの戦略をもとに、戦術(施策)を決定し実行していくことです。 今回はネットショップ運営を成功させるための戦略と、多数あるネットショップの成功に繋がる施策を紹介します。
まず戦略を立ててから具体的な戦術を決めよう
戦略を定めずにネットショップを始めてしまうと、途中で目標を見失い、効果の出ない施策を繰り返すことになってしまいます。
ここではマーケティング戦略における基礎的な考え方と、ネットショップで売上を上げるための戦略において重要な「公式」について紹介します。
戦略と戦術の違いとは
「戦略(Strategy)」とは何でしょうか。ビジネスにおいて戦略とは、競合などの市場分析を行い、どのような対象に、どのような商品コンセプトで、どのように販売するかなどを明確化することです。
つまり戦略とは、ネットショップ運営の方針(WhoやWhat)を定めることだと言えます。
戦略に対して、「戦術(Tactics)」があります。戦術は、戦略に合わせて具体的にどうするか(How)という具体的な対策(施策)です。
戦略は中長期的に目指していく方向を定めるものなので(目安は1~3年継続)、短期的に変えるものではありません。上手くいかない場合にまず変えるべきは、戦術です。
つまり、戦略に沿って決めた大きな目標を達成するために具体的な戦術を選択していく、というのがネットショップ担当者・EC事業責任者の役割になります。
ネットショップの売上のサイクルと「公式」を知ろう
ネットショップを成功させるには、次のような好循環に入ることが重要です。
集客・追客によってサイトへの流入数が増加→初回購入者数の増加→リピーターの増加→顧客データの分析→集客・追客の施策を実行→サイト流入数の増加→… この売上のサイクルを作れるか否かがネットショップの成功/失敗を分けるのです。 ネットショップの売上は、以下のような「公式」で表せます。
売上 = 流入数 × 購入率 × 平均顧客単価
流入数:何人サイトに訪問したのか
購入率:サイトに訪問した人のうち何%の人が購入したのか
平均顧客単価:購入者一人あたりの単価がいくらか
この「公式」を意識することで「売上のサイクル」の改善のポイントを考えることができるでしょう。
売上を構成する3つの要素のうちどの要素を上げるかという戦略によって、なすべき戦術(施策)が変わってきます。
それぞれの具体的な戦術については、後に紹介します。
ネットショップ成長のための王道の戦略
ここでは、ネットショップを成長させていくための「王道の戦略」を紹介します。これらは、売上と利益を伸ばすためにはぜひとも検討したい戦略です。
オリジナル商品の開発
ネットショップは商圏に限りはなく、全国の幅広いユーザーへ商品を届ける事できます。
その反面、競合となるネットショップも無数に存在します。 広告のバナー画像やサイトに訪れたユーザーが自社の販売している商品を見たときに魅力的なものではなりません。
そのため、「誰のための商品か 」「どのような悩みを解決するものなのか」を明確に定義することが魅力的な商品のポイントとなります。
特に、ネットショップの場合はオリジナル商品の開発が重要です。
量販店などで購入できる商品のみをネットショップにて販売している場合、あなたが運営しているネットショップへ訪れて購入する理由はありません。
魅力的なオリジナル商品を開発するためには、ペルソナ(サービスの典型的なユーザー像)やカスタージャーニー(顧客が商品を認知してから購買するまでの流れ)といった観点をもとに、ターゲットにしたいユーザーの解像度を上げましょう。またSTP(後述します)といったマーケティングのフレームワークを活かして商品の強みを明らかにしていきましょう。
昨今では、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる、企業が商品の企画・製造・販売などを一貫して進め、小売店等を介さずにユーザーへ直接的に販売するビジネスモデルが台頭してきています。
D2C事業で重要な事は、ユーザーとのコミュニケーションによる世界観の構築です。
ユーザーとの直接的なコミュニケーション(相互のやりとり)を通して、企業が伝えたい世界観を届けやすい環境が実現できます。
また、世界観に沿って開発されたオリジナル商品の使い心地や利用感などの情報をリアルタイムに伝えることができ、事業者はPDCAをスピーディーに回すことができます。
自社ECとモールで流入チャネルと販売チャネルを最大化を考える
魅力的な商品の計画ができたら、次は流入チャネルと販売チャネルの最大化について検討をしていきましょう。
ネットショップへ訪れるユーザーの経路は広告だけではありません。
他のメディアやGoogleのような検索エンジンで調べた結果など、様々な経路(チャネル)から流入を期待することができます。 「流入チャネルのどこに力をかけるべきか」を意識して集客する計画を立てていきましょう。
流入チャネルについて詳しく知りたい方:売上アップにはコツがある!ネットショップの集客方法とは?
ネットショップの場合、販売する箇所は大きく分けて「自社EC」と「総合モール」での販売があります。そのそれぞれにメリットとデメリットが存在します。
自社に適した販売チャネルを選択しましょう。
自社ECやモールについて詳しく知りたい方:モールと独自ショップ(自社EC)の違いは?それぞれのメリットとデメリット
リピーターにフォーカスする
ネットショップの売上を安定的に伸ばしていくには、商品のリピート率やリピーターの割合を高める必要があります。
というのも、新規顧客の増加数は次第に頭打ちになるからです。
また新規顧客を獲得するコストは近年の広告費の高騰もあり年々高まっています。
リピートを増やす戦略は、「LTV(顧客生涯価値)」を伸ばすという視点から練りたいところです。
「LTV」とは、顧客一人が生涯にどれだけ企業に利益をもたらしたかという値です。(対して平均顧客単価は、一回の買い物あたりの金額です。)
LTVの算出方法について知りたい方:ファンが多いと売上が上がる?ltvの計算方法と最大化する方法
LTVを伸ばそうとすると、中長期的に売上を上げようという目線になります。そうすると、自ずと商品の質の向上や顧客満足度の上昇な施策を行うことになるでしょう。
それが結果的にリピートを増やし、安定した売上に繋がります。
リピーターはLTVが高い、企業にとって重要な存在です。リピーターの獲得にフォーカスした自社の戦略を立てましょう。
商品開発のファーストステップ!誰のどんな悩み解決をする商品を作るか?
競合との争いが激しいネットショップの運営で成功するには、自社の商品自体に魅力があることが前提となります。
それでは、どうすれば魅力のある商品となるでしょうか。
魅力のある商品にするには、開発の際に自分たちの商品・サービスは誰を幸せにする(悩みを解決する、満足させる)のかを決めることが重要です。
ここでは、ターゲットとするユーザーと、そのユーザーに刺さるだろうポイントを吟味するためのポイントを紹介します。
ターゲット層を決める
ネットショップで販売する商品は、誰に向けた商品なのか、非常に細かく設定することが大切です。
例えば「20代女性」と設定したとしても、実際は20代前半と後半では生活スタイルが異なり関心事にも大きな差異があることから、開発した商品と消費者のニーズにズレが生じてしまうかもしれません。
ペルソナやカスタージャーニーを作成して、ユーザーの解像度をあげていくことが大事です。
年齢と性別だけではなく、職業や行動エリア、結婚の有無や、子どもがいるのかどうかといったところまで、ターゲットの像を明確にしていきます。
ターゲットとして設定した人が、最も興味を持つものは何かを見極めることは商品・サービスのコンセプトの洗練にもつながるでしょう。
STPを明確にすると訴求軸が決まる!
明確なターゲット層がきまれば、次は「STP」を元に商品の訴求軸を明確にしていきましょう。
STPとは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取ったマーケティング用語です。
それぞれは下記のような意味を持っています。
セグメンテーション:ターゲットとなるユーザーのニーズや属性を元に市場を細分化すること
ターゲティング:細分化した市場を元に、狙うべき市場を選定すること
ポジショニング:狙うべき市場での自社商品の立ち位置すること
STPを明確にできれば、他社とは差別化されたユーザーにとって魅力的な商品開発を進めることができます。
狭くて深い商品開発が成功のカギ
ユーザー層の明確化やSTPの考え方を利用した魅力的な商品開発の進め方は、「狭く」「深い」商品の開発を実現することができます。
ブランド品などの既に知名度や人気がある企業が販売する商品は、一定数のファンが存在し、また高品質なことも相まって購入されやすいです。
しかし、多くのネットショップで販売される商品は、誰もが知る商品というわけではないでしょう。また、広告にかけられる予算なども限られているはずです。
そのため、特定のユーザーに対して刺さるような、「その悩みを持つユーザーの数は少ないものの、悩みが深い商品」を開発していく戦略をとることが大事なのです。
サイトへの流入者・新規顧客を増やすための戦術
ネットショップを運営する上では、「サイトへの流入数を増やすために自分たちはどのような集客をするのか」ということとを考えておかなければなりません。
ネットショップでは第一に、サイトに訪問されなければ商品が購入されることがないからです。
ここでは、サイトへの流入増加・新規顧客の獲得のために実行できる、自社サイトに関する戦略と集客の戦略を紹介します!
自社サイトかECモールか
自社の商品をどのチャネルで販売するのか、ネットショップ担当者にとって重要な選択です。
もし自社のECサイトを開設し販売を拡大させていくという戦略を取るならば、サイト作りに関して注意したいポイントがあります。
自社ECサイトの戦略 ショップのコンセプトを明確にする
ネットショップを利用する消費者は、ショップのコンセプトに共感できるかどうかで、ショップ内の商品を見てみようと思うか、購入するかを決める傾向があります。
消費者がショップを訪問しても、コンセプトがあやふやである、わかりにくい状態では、すぐにページを離れてしまう可能性があります。
店舗の顔が見えるサイト作り
直接来店し、販売者の顔を見て商品を購入できないネットショップでは、安心感を与えることが重要です。
まず、ネットショップのトップページ、商品ページを含むすべてのページのヘッダーに、電話番号を表示しましょう。
ネットショップのユーザーは、不安な点があると、商品を購入しないケースが多いです。電話番号を表示するだけでも不安な気持ちを解消でき、購入してくれる可能性が高くなります。
さらに、インターネットで申し込みをすることを躊躇している人を、電話で注文可能な状態にすることで逃がさないという効果も期待できるのです。
次に、店長や製造者の顔写真を掲載します。
顔写真をトップページや各商品ページに掲載することで、顔写真を掲載していない場合と比較して購入率が上がったという事例もあるほどです。そのため、有効な施策と言えるでしょう。
ネットショップや商品に関わっている人の顔が見えることで、不安感を少なくし、購入につなげましょう。
ユーザーに「価値のある情報」を届けよう
顧客は何らかの悩みを解決するために、欲求を満たすために商品を購入します。
ユーザーの抱える悩みを解決するような情報、ユーザーが知りたいと思うような情報を「価値のある情報」だとすれば、価値のある情報を発信することで、商品に魅力をアップし、サイトへの流入数の増加が見込めます。
コンテンツSEOと内部SEOを徹底する
ネットショップを成功させるためのコンテンツSEOとは、サイト内に優良なコンテンツをいくつか入れ込むことによって、インターネット検索で上位表示を狙う方法です。
内部SEOとは、サイトの構造を最適化する方法を指します。
例えば、消費者にページの内容をわかりやすく表示したり、検索エンジンに正しくページ情報を伝えたりすることです。
ブログやSNSでショップの情報を公開する
ネットショップの宣伝として、ブログやSNSでショップの情報を公開しましょう。
ブログやSNSを通じて、商品やショップの認知度をあげたり、ブランディングしたりすることで購入者を増やします。 シンプルに商品を撮影して紹介するだけではなく、製造工程にこだわりがある商品であれば製造現場の様子などを掲載する方法が有効です。
写真を多く掲載したいのであればインスタグラムやフェイスブック、ブログを活用します。
ブログなどの宣伝をするためには、短い文章でアピールできるツイッターを利用するなど、宣伝内容によってSNSを使い分けることも大切です。
アクセス解析を行い、サイトの改善を行う
ネットショップは、実店舗よりもユーザー行動を把握しやすいという強みがあります。
集客のための施策を実行したら、それでどれほどアクセスが増え、成果に結びついたのかを分析しましょう。
何人がショップにアクセスしたのか、どのような流れで訪れたのか、どのページが最も多く閲覧されているかなどは、アクセス解析によって確認できます。
アクセス解析を行うのであれば、ユーザーの行動を確認するだけではなく、データに異変がないかもチェックしましょう(正しくデータを収集できていない場合があるからです)。
アクセス数と売り上げが上がった場合にアクセス解析からその原因を推測できれば、さらに売り上げをあげることに繋がるはずです。
また、閲覧数をあげたい商品をどのページに配置すればよいかなどを考えるための根拠ともなるため、サイトの改善にも役立ちます。
さらに詳しく集客について知りたい方: ネットショップの新規顧客獲得でECの売上アップ!施策のポイントを紹介
顧客単価を上げるための戦術
ここでは顧客単価を上げるための戦術を大きく2つ紹介します。
その戦術とは、決済手段を複数用意することと、クロスセルやアップセルと呼ばれる顧客への提案することです。
決済手段を充実させる(決済手段は複数用意する)
ネットショップでの決済方法の選択肢は多いほうが、より多くの顧客を取り込めます。
利用できる決済を複数表示することによって、購入者の不安感を低下させる効果や、ショップの運営に対する信頼を向上させる効果も期待できるでしょう。
ネットショップでの決済方法は、銀行振込、クレジットカード決済、代金引換決済、コンビニ決済などがあるなかで、特に注目したいのは後払い決済です。
はじめてネットショップを利用する人は、購入者が先払いをすることに抵抗を感じるケースが多いといえます。
後払い決済であれば、商品が到着してから銀行振込やコンビ二決済で支払いができるため、抵抗を感じにくく購入率もあがるのです。
しかし、ネットショップの支払い方法として半数以上を占めるクレジットカード決済を用意していない場合には、全体的な購入率がさがります。
決済の中心である銀行振込とクレジットカード決済を導入してから、ほかの方法を用意するかを決めましょう。
クロスセル・アップセルのための商品設計とレコメンド
顧客単価を向上するためには、クロスセル・アップセルを意識することも重量です。
クロスセルは、「関連した商品を購入して頂くアプローチ」を指します。
アップセルは、「購入した商品の複数セットや上位商品を購入して頂くアプローチ」を意味します。
スムーズなクロスセルとアップセルを実現するためは、商品設計とレコメンドがポイントです。
基礎化粧品を販売している場合は、次の動作として必要な乳液などの関連する商品を設計することが重要です。 また、購入した頂いた直後や購入した商品がなくなるタイミングなどでレコメンドを行うことで、商品をして頂きましょう。
購入回数を増やすための戦術
最後は購入回数を増やすための具体的な取り組みについて紹介をしていきます。
LTVを上げるには、顧客満足の向上とDX(データの活用)
LTVをあげることはネットショップにとってはファンを増やし続けることにも繋がります。
ファンを増やすポイントは顧客満足度の向上とDX(データの活用)です。
顧客満足度の向上を実現していくために、ネットショップの運営に必要な業務を全方位的に確認していく必要があります。
ここでは、盲点となりやすいフルフィルメントをテーマとしあ顧客満足度向上について紹介をします。
物流・倉庫業務を改善し、顧客満足度を上げる
物流・倉庫は商品がユーザーへ届く際の最終的な工程となります。
ネットショップで購入してから、届くまでの間にユーザーは商品を直に触ることができません。
ユーザーが描いているイメージや期待値を下回る商品が届いた場合は、それだけで満足度が下がる恐れがあります。 また、商品だけではなく同梱物にも一工夫をいれてあげましょう。
初回購入の方には、商品を理解していただくように開発して想いや使い方などを記して正しい使い方を通してよい結果を持って頂くようにしましょう。
また、配送料金の設定にも注意を払いましょう。
低価格商品の場合は配送料金などによって倍以上となる可能性や初回は送料無料でユーザーが気にしなかったが、2回目以降の購入にて、決済結果を見ると、地域によって料金が反映され金額に高いと感じてしまい解約する可能性もあります。
顧客の満足度を上げるためにこういった、不満/不安/不便の声を聞きつつ、細かな調整が必要となってきます。
DX(データを活用した顧客満足度向上)
顧客満足度の向上には、不満/不安/不便の声を聞きつつ、細かな調整が必要となってきます。
必要なポイントは集めるだけで工数が莫大にならない事です。
効率期に実現するために、ITシステムを活用して効率的に顧客のデータを集め、最適な戦術を選択できるようにしていきましょう。
ネットショップのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、「顧客のお買い物が便利より便利になるには?」という視点を持って行うことが大事です。
リピーターを特別扱いする
リピーターに再購入するためのモチベーションを高めてもらうにはどうしたらよいのでしょうか。
再購入を促すためには、リピーターを特別扱いする施策を打つのがよいでしょう。 具体的な取り組みとしては、クーポンつきのメールマガジンの配信、購入者限定のイベントを行うなどが挙げられます。
メールマガジンを配信することでショップの存在を思い出してもらい、クーポンによって購入意欲を上げ商品への興味を引く方法です。 会場を借りて実店舗としてイベントを行えば、ショップへの親近感をもってもらえるため、リピーター獲得に大きく役立ちます。
CRMでOne to Oneマーケティング
顧客データを蓄積・分析することで、ユーザーランクや購入状況に合わせて、例えばキャンペーン設計メールの配信のようなコミュニケーションがとれるでしょう。
ユーザー1人ひとりの状態や状況に合わせたマーケティング施策を通して、ユーザーに対して特別感を演出することができます。
さらに詳しくリピートについて知りたい方: リピート顧客で売上アップ!ネットショップでリピーターを増やす考え方と施策を紹介