目次
年々市場規模が拡大しているEC市場において、食品のEC化率は他の物販系のEC化率と比べると低くなっています。なぜなら、食品自体の単価が低いことに加えて、食品は鮮度が重要であるため管理や配送に通常よりもコストが発生し利益を上げにくいからです。
本記事ではそんな食品ならではのデメリットを考慮しつつ、食品分野でネットショップを運営する上で定期通販コースを用意するメリットをご紹介いたします。
現在の食品EC市場
まず、現在の食品ECの市場規模やEC化率について見ていきましょう。
食品ECの市場規模
2021年の日本国内におけるBtoC向けECの市場規模は20.7兆円で、中でも物販系分野が13兆2865億円でした。
その中でも食品・飲料・酒類の分野は約14%を占め、市場規模は2兆5199億円です。他の物販系分野(家電、生活雑貨、衣服、書籍)と比較しても低くはない数字です。
引用:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました 2022年8月12日」
約2兆円という市場規模はあるものの、EC化率は3.77%という他分野と比べて低い数字となっており、食品分野においてはEC化がまだまだ進んでいない状態となっております。
食品ECに取り組むうえで注意したい点
ではなぜ食品分野でEC化率が進んでいないのでしょうか。それは他の物販と比べ「食品ならでは」の特徴があるからです。
商品の単価が安く利益が出しにくい
前提として食品自体の単価が安いことが挙げられます。
高級品等ではない限り、食品自体の単価は数百円~数千円程度が平均的な相場です。
加えて在庫管理、設備の維持や受注から配送までの作業、ピッキングから包装まで一連のフルフィル周りの作業を、衛生面に考慮して行う必要があります。
単価が安いことに加えて受注〜出荷作業までコストが高価なため、利益を出しにくい収益構造となってることが食品のEC化率を押し下げている要因です。
徹底した商品(食材・食品)の品質管理が必要となる
食品は生ものを扱うため通常の在庫管理に加えて、鮮度を保つために賞味期限や消費期限を考慮した品質管理が非常に重要となります。また消費期限を過ぎた食品や食材に関しては廃棄処分が必要となるため、余分な在庫を抱えすぎると廃棄コストが発生してしまいます。
食品としての鮮度を長く保つために必然的に冷凍や冷蔵管理が必要となるため、物流周りに関しては自社発送ではなく外部のアウトソーシングを検討しましょう。
配送コストが高い
「販売対象を全国に広げられる」ことがEC販売の大きなメリットの1つとですが、食品においては品質管理が特に重要となるため、そのための物流拠点を複数確保しなければなりません。
また、配送においても食品に特化した独自の物流拠点を持つことが必要となるため、必然的に物流拠点が限られてしまいます。
上記3つの点から、食品ECを行うにはコストがかかり利益が出しにくい収益構造となっているため、必然的に多売薄利な形を取らざるを得なくなってしまいます。
そのためより多くの新規顧客を獲得するために獲得コストが発生し、さらに利益を圧迫してしまう悪循環に陥ってしまいます。
※食品EC・通販についてさらに詳しく知りたい方はこちら:食品EC・通販の特徴と、売上アップのポイントについて解説!
食品ECをやるなら、定期通販がオススメ
ここまで食品分野でのECが難しい理由を挙げてきましたが、大きく分けるとポイントは2点になります。
①単価が安く利益を上げにくい
②少ない利益に加えてコストが発生する
①に関しては、仕入れコストを下げるために、「一度の仕入れ量を増やし1回ごとの単価を下げる」「卸業者を挟まずに生産者から直接仕入れる」などを行うこともできますが、その削減の幅には限界があるでしょう。
そのため②のいかにコストを抑えるかが、ポイントとなってきます。
この問題を解決するのに有効な手法が「定期コース」の提供です。
定期通販とは
そもそも定期通販とは、商品やサービスを顧客に継続して購入・利用してもらうという販売手法です。
継続して顧客にサービスを利用してもらうことを前提としたビジネスモデルのため、安定的に売上を得ることができることが大きな特徴となります。
定期通販についてさらに詳しく知りたい方はこちら:定期通販とは?定期通販ビジネスの特徴とメリットを紹介
なぜ定期通販は優れたビジネスモデルなのか?
先述の通り食品は低い単価に加えて、ECの場合さらに管理・配送コストが発生するため、必然的に多売薄利の戦略を取らざるを得なくなり新規獲得コストが発生します。
そのため、いかに獲得コストを抑えて顧客に購入をしてもらうかが食品ECを成功させるうえで大きなポイントとなります。
その一番の鍵を握るのが「リピーター」です。
リピーターは一度商品を購入してくれているお客様のため、新規のお客様よりも購入コストを抑えられることが大きな特徴です。リピーターを増やしていく定期通販と非常に相性が良いと言えるでしょう。
ここでは食品ECに定期通販を取り入れる具体的な3つのメリットをご紹介させていただきます。
広告費を抑えて購入数を増やすことができる
前述の通りリピーターを増やすことで広告費をかけずに購入数を増やすことができます。
新規の購入を増やすためには多額の広告費や宣伝費を要するため、1顧客を獲得するのに大きなコストが発生しますが、一度商品を購入した顧客であれば獲得コストをかけずに再度購入をする可能性が高いことが理由として挙げられます。
商品の横展開がしやすくリピーターが作りやすい
食品であれば他の商品で使用している食材をもとに別の商品を作ることも可能なため、新商品を作りやすいというメリットがあります。
新商品を新しく開発したときに、メルマガやステップメール等を用いることで継続的に商品を購入し続けてくれる仕組みを作りやすいことが挙げられます。
※効果的なメルマガ配信について知りたい方はこちら:魅力的な文章を!商品の購入につながるメルマガの書き方
売上予測から廃棄量を推測できる
食品は化粧品や美容品等の物販と比べて廃棄サイクルが短いため、コストを抑えるために出来る限り廃棄を抑える必要があります。
定期通販であれば顧客の継続率や解約率のデータをもとに今後の売上予測(販売個数)を立てることができます。
そのデータをもとに商品の仕入れを行うことで食品の廃棄コストを抑えることができ、適切な消費サイクルを回すことが可能となります。
食品の定期通販を行っている企業の事例
最後に食品分野において定期通販を行っている企業の事例をご紹介させていただきます。
三ツ星ファーム
三ツ星ファームは株式会社イングリウッドが提供する冷凍弁当の定期宅食サービスです。
ミシュランを獲得している料理人やシェフが監修している栄養バランスの取れた低糖質のおかずを届けます。1回の配送あたり7食、14食、21食の3つのプランから選べることが特徴です。
常に新しい豊富な種類のおかずを取り揃えており、好きな組み合わせが選択できるほか、種類が多く選べないお客様向けにそれぞれの目的ごとに合わせたセレクトメニューも用意されています。
専用マイページからお届け日の変更やスキップ、お届けサイクルを簡単に変更できるため、お客様のライフスタイルに合わせた対応を行っていることが人気な理由です。
参考:三ツ星ファーム
Oisix(オイシックス)
オイシックス・ラ・大地株式会社が提供しているOisixは、主に野菜や果物等の食材やオリジナル加工食品、料理キットを提供している宅配サービスです。
様々な生産者の方と直接やり取りを行い、独自の安全基準を設け食材を厳選しており、また合成保存料、着色料無添加への取り組みを行っているため、お客様としても安心して食材を調達出来ることが特徴として挙げられます。
また様々なコースやサービスを備えていることに加えて三ツ星ファーム同様お客様のライフスタイルに合わせた宅配を選択できるため、長く利用してくれるファンを作りやすい点が強みです。
参考:Oisix
LikeSweetsBOX(ライクスイーツボックス)
LikeSweetBOXは、毎月お菓子やケーキなどのスイーツをお届けする定期便のサービスです。
様々なコースやプランを用意しています。SNSなどを通して人気のスイーツを独自に調査し、写真を撮りたくなるようなスイーツを提供しているのが特徴です。
Instagramで新商品やイベント等の情報発信も積極的に行い、顧客とのコミュニケーションを行っています。
参考: お取り寄せできる可愛いインスタ映えスイーツ・ケーキなら「LikeSweetsBOX」
※食品D2Cの事例についてさらに詳しく知りたい方はこちら:人気食品D2Cブランド7選!食品D2C成功のポイントとは?
まとめ
本記事では、食品通販の特徴や注意したいポイントについて解説しました。
食品を通販を扱ううえではコストや品質管理が参入障壁となりますが、定期通販モデルを採用することでそれらデメリットを解消することができるでしょう。