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単品通販事業は新規参入しやすく、成功すれば安定的な利益が望めるというビジネスです。一方で、そのビジネスモデルを理解しないまま事業を始めてしまい失敗してしまう事業者も後を絶たちません。したがって単に儲かりそうという理由だけで単品通販事業を始めるのはかなり危険です。
そこで今回は、単品通販のビジネスモデルと、押さえておきたい事業成功のためのポイントについて紹介します。
単品通販のビジネスモデルとは?
単品通販とは
単品通販とは、1種類の商品やブランドだけを取り扱うECのビジネスモデルです。
単品通販のビジネスモデルで重要なのは、「定期購入に繋げる仕組みを作り、継続的に商品を使ってもらうこと」です。そのため単品通販の多くは、「単品リピート通販」や「定期通販」とも言われます。
単品通販の特徴
単品通販ビジネスでは、同じお客様に商品を使い続けてもらい「LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)」が一定の水準になることによってビジネスが成り立ちます。
そのため単品通販では、一般に以下のような商材が適しています。
・日々使用される化粧品、美容雑貨、食品、健康食品、日用品
・年間で4〜5回以上購入される可能性がある商品
・他社にはない独自の強み(USP)、オリジナリティがある商品
販売方法として「初回購入割引」「まとめ買い」「定期便の期間変更」など、単品通販ならではの売り方があることも単品通販の特徴です。
単品通販ビジネスで商品を販売する場合、販売事業者は商品を訴求するターゲットを絞ることが有効です。事業立ち上げ時には、自社の商品・サービスに興味を持つような見込み顧客といかに接点を作るか(どこで商品を売るのか、どの媒体から商品ページに訪問してもらうのかなど)を意識しましょう。
一つの商材から事業をスタートさせその商品が一定の支持を得た後に、蓄積された購買データを活かし顧客にマッチした類似カテゴリの商品を新たに開発・販売し事業を拡大させていく企業もあります。
例えば男性化粧水の販売から始め、男性向けシャンプーや香水など「男の身だしなみ」にフォーカスした商品開発するといったケースです。このように顧客が購入する商品と別の商品を提案する販促手法をクロスセルと呼びます。
単品通販でのクロスセルの事例は下記記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。
参考:数々のEC支援を手がけてきたTeN社。自社の食品ブランド「イミコトマルシェ」の販売戦略とは?
単品通販と総合通販の違い
単品通販は、1種類の商品や1つのブランドに絞ってECサイト上で販売するビジネスのことです。そのため一般的な通販(総合通販)と比較してみると、「商品数が少ない」「少ない資本で始めやすい」「リピート率が高い」などの特徴があります。
Amazonや楽天市場に代表される総合通販は、複数のジャンルの商品をECサイト上で幅広く販売するのが特徴です。
単品通販と総合通販のビジネスモデルの比較
特徴 | 単品通販 | 総合通販 |
商品数 | 1点もしくは少数 | 多数 |
商品ジャンル | 化粧品、健康食品などの消耗品 | 複数のジャンル |
ユーザー層 | 狭い | 広い |
導入するカートシステム | リピート機能のあるカートの中から選定 | コストと活用したい機能をもとに選定 |
単品通販のメリット・デメリット
単品通販のメリット
①参入障壁が低い(1種類の商材からでスタートできる)
通販事業に参入するにはそれなりの初期投資が必要になりますが、単品通販だと1種類の商材からでも事業をスタートできるので、商品開発費、媒体費の導入(チラシ、新聞等)、人件費、在庫管理費なども総合通販より少額で済みます。そのため単品通販は参入障壁が低いと言われています。各業務をアウトソースすることで個人や少人数で事業を運営する事業者もいます。
②継続的な売上見通しが立てられる
単品通販は、リピート購入(定期購入、サブスク契約)を前提とした「リピート通販」というビジネスモデルを採用することが多いです。そのメリットとしては、来月以降の契約者数の推移予測をもとにして、今後いつどこにどのくらいの費用(広告費や人件費等)をかけていくかを計画しやすいという点が挙げられます。
③販売促進がしやすい
単品通販は総合通販に比べて販売する商品が限定的なため、対象の顧客が絞りやすくなり、商品が売りやすいといったメリットがあります。
総合通販の場合は、取り扱う商品数が多いため、多くの商品を宣伝しなければならず、結果的にコストが膨らむ傾向にあります。
④LTV(顧客生涯価値)が高い
単品通販では化粧品や健康食品などの繰り返し使用される消耗品で始めるのが良いとされています。なぜなら化粧品や健康食品には、使用し続けることで効果の出るものも多く、また使用期間が限られているという特徴があるからです。
そのため一度商品を気に入ってもらえれば継続的に購入される傾向があり、結果としてLTVが高くなります。
単品通販のデメリット
一方で、単品通販にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
①新規顧客獲得にコストがかかる
単品通販では基本的には自社で開発した商品を扱うため、発売当初は認知度が低く、新規の顧客を増やすための広告費などでコストが膨らむ傾向にあります。そのため、SNSなどをうまく活用しコストを抑えつつ自社商品の認知度を上げていくことが重要になります。
②アプローチできる顧客が限られる
単品通販はアプローチできる顧客をしっかりと設定して販売することが重要となります。アプローチする顧客を絞る分、その母数は少なくなるため、顧客との接点が持てなければなかなか売上が伸びないというデメリットが生じてしまうのです。
そのため、効果的なマーケティング施策とプロモーションを行い、自社の商品・サービスが価値を提供できる顧客を継続して増やしていくことが重要になります。
③大手企業の参入
単品通販はスモールスタートでも事業を始められるのが特徴ですが、ある程度売上が伸びて市場にサービスが認知されると、ビジネスチャンスがあると知った大手企業が参入してくるケースがあります。大手企業は一般消費者からの認知度が高く資金力があるので、一気に顧客シェアを奪われてしまう可能性は排除しきれません。
そのため、大手企業が参入してきても顧客が離れないような商品設計や、ブランディング、ファン作りが重要になります。
④法改正への対応
EC事業全般でも言えますが、美容・健康食品といった単品通販で多く扱われる商材では薬機法に抵触しない広告表現にしなければなりません。薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のことです。
加えて、2022年6月の特定商取引法の改正で単品通販事業の規制が強くなっているのも事実です。
以上のように通販事業に影響を与える法改正は度々行われています。薬機法や特定商取引法を遵守した商品開発、サイト運営を心がけておくのが今後の単品通販ビジネスでは必須となってくるでしょう。
※法律に関する参考記事
薬事法から薬機法へ!化粧品を扱うなら知っておきたい法律のこと
商品によって変わる法律!食品ネット販売のはじめ方と成功の秘訣
法令違反にならないように!オプトインとオプトアウトの基本知識
単品通販のビジネスモデルで成功するためのポイント
ポイント① 顧客にとっての価値を考える
顧客にとっての価値を考える上で商品やサービスに不可欠な要素が3つあります。
それは「お得」「悩み解決」「便利」になります。
お得・・・そのサービスは製品を購入するよりもお得かどうか。あるいは定期購入に踏み切るだけのお得感があるのか。
悩み解決・・・顧客が持つ悩みとは何か。提供しようとしているサービスはその悩みを解決できるか。
便利・・・そのサービスの利便性は何か?顧客はそのサービスのどこに利便性を感じるのか。
顧客の不便や不満を解消することが、単品通販のビジネスでは極めて重要です。紹介した3つのポイントを意識しながら事業展開することをおすすめします。
ポイント② 他社商品との差別化を図るブランディング
現在の単品通販・総合通販市場では多くの事業者がECサイトを運営しています。様々なサイトがあるなかでユーザーに自社の商品を選んでもらうのは難しい場合が多いです。集客力や価格競争という点では大手ECサイトのAmazonや楽天などが優位に立つでしょう。
ですので自社サイトで商品を選んでもらうには他社商品との差別化を図る必要があります。
他社と自社を差別化するための取り組みの一つが、ブランディングです。
単品通販のビジネスモデルは総合通販よりもブランディングに向いています。なぜなら、様々な競合の商品と比較されてしまう総合通販とは異なり、単品通販はサイト内で一つの商品の特徴、ブランドの世界観を訴求しやすいからです。
レッドオーシャン化する単品通販・総合通販市場で、他社との差別化を図るためにもブランディングに力を入れることをおすすめします。
ポイント③ リピート購入を前提にした商品作り
単品通販のビジネスモデルではいかにリピートで購入してくれる顧客を増やしていけるかどうかが重要となります。そのため、健康食品、化粧品、食品など、毎日使う消費財で商品作りをすることをおすすめします。
「また買いたい」と思ってもらえるような魅力的な商品を作らなければ買い続けてもらえないので、効果が実感できる商品であることに加えて、ここでしか買えないような限定感・希少性を打ち出すことも考えて作りましょう。
※リピート率を高めるCRM施策について詳しく知りたい方はこちら:単品通販のLTVを最大化させるCRM施策とは?
ポイント④ SNSの活用
単品通販事業を行うにあたり、SNSを活用することは必須と言えます。
SNSは宣伝力が強く拡散性に優れているため、SNSの活用次第では売上に大きく貢献するからです。
また近年ではユーチューバーやインフルエンサーといった若い世代に大きい反響を及ぼす芸能人を起用し、商品を宣伝してもらうのも主流となっています。ユーチューバーやインフルエンサーは特定の世代や領域にとても大きい影響力があるため、購買行動に対しても大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。
SNSは顧客とのコミュニケーションが容易なため、固定ファンの獲得も期待できます。固定ファンを獲得することで継続的に商品を購入してもらえるようになり、結果的に売上が上がる傾向にあります。
ポイント⑤ ツーステップマーケティングを基本に
ツーステップマーケティングとは、まず初めに商品のサンプルや試供品(無料モニター)をユーザーに試してもらい、納得した上で本商品の定期コースに引き上げるという販売手法です。
入り口のハードルが低くなることで「試してみよう」という心理が働くことや商品の良さに納得した上で定期コースに申し込むため、顧客の満足度は上がり、LTV(顧客生涯価値)が高くなる傾向があります。
単品通販はこのツーステップマーケティングとの相性が良いため、単品通販事業者はツーステップマーケティングのビジネスモデルを採用することが多いです。
※参考:ワンステップマーケティングとは
新規顧客に対して初回から本商品の定期コースを案内する販売手法です。
ワンステップマーケティングには即売上に繋げられるというメリットがあります。既にブランドの知名度が高い企業や、顧客から高い信頼を得ている製品を持っている企業には有効な販売手法です。
ポイント⑥ 頒布会コースを取り入れる
地方の特産物や高級食材を販売する食品EC・通販を行うのであれば、「頒布会」と呼ばれる販売手法を取り入れることを検討しましょう。
頒布会とは、会員に毎回異なる商品を定期的に届ける販売手法です。顧客は会費を払い会員になることで、事業者が選んだセット商品を継続的に受け取ることができます。
顧客にとって頒布会は、同一の商品の届くコースとは異なり「飽きがこない」「今月はどのような商品が届くだろう?と期待できる」といったメリットがあります。
※頒布会についてさらに詳しく知りたい方はこちら:頒布会とは?定期コースとの違いやメリットを解説
単品通販で成功した事例
①COLORIS(カラリス)
株式会社ストークメディエーションのCOLORIS(カラリス)は、契約者の髪質にパーソナライズされたセルフカラーを提供し、サロン仕上がりのようなダメージのない艶やかな髪色を実現します。
プロダクトやサービス設計、マーケティング戦略などブランドの世界観を全面に押し出した施策が成功し、2020年10月と2021年7月で比較して、売上が230%、CV数が213%増加した実績があります。
※カラリスのECカートシステム導入事例:「COLORIS」
②三つ星ファーム
株式会社イングリウッドの三つ星ファームは、数十種類の豊富なメニューからお惣菜プレートを選んでオーダーできるサブスクサービスです。
三つ星ファームが単品通販で成功した要因は「選べるおかずの定期便」「ライフスタイルに合わせた3コース」など、ユーザーに寄り添った商品の設計がなされています。またインスタグラムなどのSNSや口コミなどを上手く活用し、サービスを拡大させています。
※三つ星ファームのECカートシステム導入事例:「三つ星ファーム」
③セサミン
主力商品であるサプリメント「セサミン」を販売しているサントリーウェルネス社は、単品通販の代表的な成功事例です。
初回購入のハードルを下げるための「無料お試しキャンペーン」から定購購入に繋げるツーステップマーケティングを採用して、大きく売上を伸ばしました。
またサントリーウェルネス社はセサミンだけでなく「ロコモア」など年配向けのサプリメントを開発・販売していることから、既存顧客層を意識した商品展開で成長した好例とも言えるでしょう。
まとめ
今回は、単品通販のビジネスモデルや単品通販成功のポイントなどを紹介しました。
単品通販には小規模からでもスタートできるために事業に参入しやすいという特徴があります。一方で、参入しやすいと言ってもうまく行かず事業撤退に追い込まれてしまうケースも少なくありません。そのため、単品通販のビジネスモデルと成功のポイントをしっかりと理解してから開業準備を始めましょう。
※単品通販の決済カートシステム選びについて詳しく知りたい方はこちら:単品通販に最適なカートシステムの選び方を徹底解説!